
あらすじ
オーストラリアに流れてきたアフリカ難民サリマは、精肉作業場で働きつつ二人の息子を育てている。
母語の読み書きすらままならない彼女は、職業訓練学校で英語を学びはじめる。
そこには、自分の夢をあきらめ夫について渡豪した日本人女性「ハリネズミ」との出会いが待っていた。
人間としての尊厳と〈言葉〉を取り戻し異郷で逞しく生きる主人公の姿を描いて、大きな感動をよんだ話題作。
解説 小野正嗣
(筑摩書房より)
感想レビュー
第29回太宰治賞受賞、本屋大賞2014(第11回)第4位
個人的に太宰治賞の作品を読むのはかなり久しぶりで、そもそもこの作品を何のきっかけで読もうと思ったのか思い出せないのですが、とにかく読んで見ました。
まず読了後の所感としましては、じーんと心に染み渡るような一冊だったかなと。
太宰治賞ということで、純文学作品らしく、内面が丁寧に描かれていました。
解説にも書かれていましたが、アフリカ難民の女性を主人公に描いた作品が、日本の文学賞を受賞することは、確かにすごいことだなと思いました。
展開ではなく、内面の掘り下げをもって物語が進んでいく。
個人的にここ数年は、主にエンタメ小説ばかり読んでいたので、そういえば文学ってこういう感じだったなと、自分の凝り固まった小説概念が解きほぐされていくようでした。
物語は、アフリカ難民の女性「サリマ」の視点と、日本人女性の文通視点の二つで進んでいきます。
この二人の共通点は、互いにオーストラリアに移住してきたということ。
二人の移住理由は違いますが、互いに英語に不自由で、その壁がそれぞれに丁寧に描かれていました。
第二言語の不自由さは、孤独、悲しみ、葛藤を生み出します。そうした中で、人々の交流を得て、成熟していく物語は、少しずつ前向きなものになっていきました。
二人の周囲にいる人も、それぞれの形の孤独を抱えていて、それらの描き方、言語化の仕方がすごく良かったです。
もしかしたら人によっては、他人に依存しているこの生き方を嫌悪する人もいるでしょう。でも、それでいいのだと同時に思うのです。
それが独自のコミュニティを作り、多様を生み出しますから。理想郷を目指さない限り。
別に小説に限らず殆どのエンタメ作品って、社会にいたらヤバい奴らばかりじゃないですか。笑
そっちの方が派手な仕掛けや展開が作れますし、私も好きなのですが。
だからこそ、派手さはないけど、本作のような落ち着いた小説があってくれてよかったなと、今回染み染み思いました。
あと著者さんは、オーストラリアに二十年以上在住しているとのことらしく、色々な経験が詰め込まれているのかなと思いました。
それでは今日はここまで。
最後までお読み頂き、ありがとうございました。
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