たかが殺人じゃないか-昭和24年の推理小説-【あらすじネタバレ感想】

あらすじ

*第1位『このミステリーがすごい! 2021年版』国内編 
*第1位〈週刊文春〉2020ミステリーベスト10 国内部門
*第1位〈ハヤカワ・ミステリマガジン〉ミステリが読みたい! 国内篇

昭和24年、ミステリ作家を目指しているカツ丼こと風早勝利は、名古屋市内の新制高校3年生になった。旧制中学卒業後の、たった一年だけの男女共学の高校生活。
そんな中、顧問の勧めで勝利たち推理小説研究会は、映画研究会と合同で一泊旅行を計画する。顧問と男女生徒五名で湯谷温泉へ、修学旅行代わりの小旅行だった──。
そこで巻き込まれた密室殺人事件。さらに夏休み最終日の夜、キティ台風が襲来する中で起きた廃墟での首切り殺人事件! 二つの不可解な事件に遭遇した勝利たちは果たして……。

著者自らが経験した戦後日本の混乱期と、青春の日々をみずみずしく描き出す。『深夜の博覧会 昭和12年の探偵小説』に続く、“昭和ミステリ”第2弾。

(東京創元社より)

感想・レビュー

このミステリーがすごい!《2021》第一位

何やら様々なミステリランキングを獲ったりしているとかで、とても気になっていた作品です。

この「たかが殺人じゃないか」というパンチのあるタイトルがすごく良い。

物語は本格と青春推理の中間ぐらいな感じ。

舞台は高校三年制が初めて導入された昭和24年。

アメリカ色が色濃く輸入されはじめた戦後の混乱と変化に揉まれる日本という感じですかね。

そこで推理研究会、映画研究会の合同修学旅行が行われる。なぜ修学旅行?というのが戦前までは男女共学という制度はほとんどなく、戦後のアメリカ式がそうさせて今の男女共学があるらしい。

だが急な制度に戦前教育を受けて根っこから染まってしまった大人(教育者)たちは、男女が同じ学び舎で席を揃えて学ぶだけでもいかがわしく、ましてや修学旅行など淫乱以外の何者でもないという考えが強かった。

その辺が非常に興味深く、この時代を現していましたね。

そのせいでこの時期は修学旅行が無くなったりするのもよくあったとか。

物語を戻しましてその修学旅行でまず第一の殺人が起きます。そこから事件へ…といかないというのがまた面白く、わりとあっさり警察に預けて物語は日常ルートに戻るんです。

この辺もある意味新鮮でかつリアリズム的で、逆にどうなるんだ?と頁を捲りました。

物語の中間で各キャラクターの過去が少しずつみえて、その背景に時代が投影されていたりその辺も上手かったです。

この辺りで探偵が出てくるのですが、多分、この作品は第二弾とのことで、前作の主人公なのかしら。

第二のバラバラ殺人が学校で起きます。

そのトリックは大胆過ぎて少し大丈夫かなとも思いましたが、動機が非常に時代を投影していて、それが個性的な人物を形成していてよかったと思います。

まぁ本音を言いますと、トリックの小道具が生きた時代が違いすぎて多少自分には理解が難しい感じもしたが、何とか想像して補正していきました。

それが少し勿体ないかと思いましたけど、仕方ないことなのかなと。

それ以上に戦後の情景や、今どきチックな文体がいい塩梅に調和していて読むのは楽しかったです。

著者の辻さんが実際に生きて見てきた時代らしく、今もう80を超えてこの作品を書いたことがまず素直にすごいなと。

調べたらどうやら辻さんは、すごい経歴の持ち主らしい。

「鉄腕アトム」「サザエさん」「Dr.スランプ アラレちゃん」「名探偵コナン」など、他にも数え切れないほどのアニメ作品の脚本を書いてきた脚本家らしいです。

確かにコナンの少年探偵団のようにあの男女五人も見えてきました。

これは生涯書き続けた人にしか成せない領域なのは間違いないですね。

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