あらすじ
自分用に書いた日記と、公表を期して清書した日記――「アンネの日記」が2種類存在したことはあまりにも有名だ。
本書はその2つを編集した〈完全版〉に、さらに新たに発見された日記を加えた〈増補新訂版〉。
ナチ占領下の異常な環境の中で、13歳から15歳という思春期を過ごした少女の夢と悩みがより瑞々しくよみがえる。
(文藝春秋より)
感想・レビュー
少し前に「ユダヤ人の歴史」という本を読んだのですが、
生きているうちにいつかは絶対にこの「アンネの日記」も読んでおきたいと思いました。
たまたま妹が読んでいたので、借りて読んでみました。
正直、アンネたちの末路は知っていたので、読むのが辛いときもありました。しかし、時間をかけてしっかりと読んでいきました。
まず読んだ所感としては、やっぱり人生のどこかで1度は必ず読んでおくべき一冊だったなと思いました。
あくまでもこれはアンネ・フランクという一人の人間の日記なので、アンネ自身の人間性がどうといったことには細かく言及しないでおこうと思います。
アンネ・フランクは、この日記を1942年6月12日〜1944年8月1日までの約2年間書きました。
この時代は第二次世界大戦のちょうど終盤辺りで、この時のアンネたちが隠れ家に潜伏した場所は、ドイツ(ジャーマニー)占領下にあるオランダ(ネザーランド)。
もう言うまでもありませんが、この時代のドイツは「ナチス・ドイツ」と呼ばれた「アドルフ・ヒトラー」が首相になった時代です。
この時代のドイツは、第一次世界大戦に負け、とても払いきれない賠償金に苦しめられました。
経済的にも厳しく、失業者は溢れかえり、治安は悪化。所謂、国家滅亡の危機と呼べる状態です。
そんな荒廃した状態の中で、国民の英雄として立ち上がったのがヒトラーでした。
しかし彼はユダヤ人を標的に善悪の物語を作り、歴史的にも最大の「ホロコースト」が起きたました。
時代背景はざっくりとこんな感じで、この時のアンネの歳は13歳〜15歳。
この特異な閉鎖環境(隠れ家)での暮らしや、アンネの心の変化が描かれていきます。
正直、私だったらこんな閉鎖環境で生きるのはとてつもなく苦しくて、考えただけでもぞっとします。
しかし外に一歩出れば、強制収容所行きですから……とんでもない時代です。
アンネは若くして文才にも優れ、両親や姉、同居人たちとの日々も描かれていました。
そんなアンネは、今でこそ世界的に有名な一人になっていますが、どこにでもいる普通のレディだったと思います。ただ生きる時代を除けば。
思春期だってあるし、恋だってするし、家族と住みながらも孤独に苛まれる。よくあることです。
しかしそんなアンネも熱心に読書をした人によく見られる、急速に心が大人になっていくのが文章から窺えました。
だからこそ彼女には生きて、作家になって欲しかった。
確かに父親や多くの大人による頑張りもあり「死んでからも生き続ける」ことには色んな意味で成功したかもしれない。それが唯一の達成かもしれない。
でもこんな形は、あまりにも悲しすぎます。
アンネたち一同は、その後告発により、アウシュビッツなどの強制収容所でバラバラになり、父親以外は、たったの数年で亡くなりました。
つまりそれだけユダヤ人は、人間扱いされない過酷な環境だったということです(興味ある人は、何が行われていたかは自分で調べてみてください)。
何より恐ろしいのは、まだこの時から1世紀すら経ったおらず、歴史的に見ればまだまだつい最近のことでもあるということ。
さらに日本は、この時のナチス・ドイツと形はどうあれ仲間ですからね。
この意味は、本当に大きく受け止めなくてはいけないなと改めて思いました。
そしてもう一つ大事なことは、こういったユダヤ人の歴史が、アンネだけではなく、多くの人間に対して何千年も繰り返されてきたこと。
そして今もなお起きている現実の問題として、理解しておかなくてはいけないということです。
しかし人間は「差別」をこれほど駄目なことだと分かりつつも「差別」をしてしまいます。
残念なことに日本でも差別は毎日あります。
「ああいう奴らは〜」「あの国の〇〇は〜」「男は〜女は〜」数えだすとキリがありません。
ですが私達「ホモ・サピエンス」は、ほんの少しの多様性と大量の差別をして、文明を発展してきた一面もあります。そのことを理解しなくてはいけません。
それがどういうことなのか。考えなくてはいけません。
人間の限界をいつか見なくてはいけない。
そんな歴史が近づいていることを我々は日々、心掛けなくてはいけないかもしれませんね。
それでは今日はここまで。
最後までお読みいただきありがとうございました。
翻訳は深町眞理子さんです。
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