あらすじ
生前の罪により、輪廻のサイクルから外されたぼくの魂。
だが天使業界の抽選にあたり、再挑戦のチャンスを得た。
自殺を図った少年、真の体にホームステイし、自分の罪を思い出さなければならないのだ。
真として過ごすうち、ぼくは人の欠点や美点が見えてくるようになるのだが…。
不朽の名作ついに登場。
(文藝春秋より)
感想・レビュー
森絵都さんは初読みになります。
まず率直な読後感としては、読みやすくスラスラと読めてなんか面白かったなぁ、とぼんやり思えた感じでしょうか。
一人称の「僕」は生前に何やら罪を犯して死んだらしく、だが天使で出てきて再度生きる抽選にあったとか何とかで、それも知らない誰かの体に乗っ取って生きるという。
天使が言うには、しっかりと真面目に生きれば反省とみなされ、輪廻のサイクルに戻され、何かしらの前世になれるとか。
まぁそんな感じで主人公が「ホームステイ」することになった家は一見、普通の家族にみえたのですが、徐々に闇があって……とここまでのリーダビリティなども良かったですね。
乗っ取った小林真という人物を俯瞰的に知っていく過程や、学校やその時期特有の家族の見え方なども青春的です。
とくにこの歳くらいの子供は、多感な故に狭い世界で生きていて、狭いところしか見えなくなる、という普遍的なものも描かれています。
そうして色々なことを経験していく主人公は、自分の見ていた景色の見え方が高さや低さを変えるだけで違うことを徐々に気づいていきます。
この世界がカラフルでそれ故に生きることは難しいことを知る。
でも赤、青も、黄色も緑も、実はそれで良いいんだという風に捉えられるようになる、森さんが書きたかったものが何となくここに書かれているのではないだろうか、と私は勝手に思いました。
そこで序盤から引っ張る為の要素の生前の罪とやらは実にしょうもないと言ってしまえばそれまでなのですが、まぁこの物語にはこの答えしかないのかもしれませんね。笑
個人的には不倫した母親がなんか好きでしたね。
なんか嫌いになれないというか、なんか可愛らしさすらあったような気もしています。
実際に自分の母親だったら余計なことしてんじゃねーよと思いますけど、この歳くらいになって思うのは、息子を心配して高校のパンフレット貰いに行ってくれる母ちゃんを外から見てるのは微笑ましいというか。
別に良いやんってなりましたね。不倫はさておき。笑
まぁ全体的には軽く読めて、時にこう読まされる感じもあったので良かったと思います。
おそらく現代に発売されていたら本作は、ライトノベル・文芸とかに分類される感じですかね。三秋縋さんとかと近い感じかしら。
私が読んだのは文庫本だったのですが、単行本発売日が1998年の7月と記載されていますので、この時代にはライト文芸などは当然ありませんので、一般文芸とされてますが。
そこで思ったのですが、ライト文芸ってこれからもっと幅広い読者を獲得出来そうなを感じがしましたね。
まぁ出版社はそんなこととっくに分かって売ってるのでしょうけど。笑
それでは本日はこの辺で終わりたいと思いますけ。お疲れ様でしたね。