あらすじ
手書きから活字印刷へ-書物の大量生産を実現した15世紀ドイツの発明家グーテンベルクとは何者だったか。
その美しい「聖書」はどのように生まれたか。
コンピュータによってグーテンベルク聖書のデジタル化を進める著者が、謎に包まれたその生涯と当時のヨーロッパ社会に光を当て、今日に至る印刷文化の劇的な展開を描く。
(岩波書店より)
感想・レビュー
以前読んだ「本の歴史」と「文字の歴史」という本で、印刷界の父、活版印刷の第一人者、とも言われる【ヨハネス・グーテンベルク】に強く興味を持ちました。
彼が活版印刷を発明したのを機に、世界で生きる人類は、多くの書物を読むことが出来るようになりました。
ヨーロッパ史では、羅針盤、火薬、そして印刷技術と「三大発明」とも言われています。
人類史から窺える通り、人は文字を獲得する前と獲得後では、文明進化のスピードが段違いです。
それ程までに『ホモ・サピエンス』×『文字・言語』の相性、親和性というのは良い悪いを抜きにして、抜群に良かったとも言えます。
個人的にも、グーテンベルクのことをネットで色々と調べてみて分かったのは、とにかく謎の多い人物だということ。
学者たちは、あぁだこうだと、時に政治的に、時に幻想的な思いを馳せ、グーテンベルクの生涯について、議論を重ねていますが、結局のところ憶測の域は出ていません。
そういう時は伝記などを読むしかないと思い、今の私にとって魅力的なタイトルの本書を手にとってみました。
まず結論から言いますと、正直そこまでネットで調べた以上の事が知れたかと言うと、そうではありませんでした。
所々、グーテンベルクの謎に触れそうな部分もあったのですが、殆どはグーテンベルクの周辺の話やあまり関係ないのない部分が多かったように思えます。
少し残念だなぁと思いつつも、やっぱりグーテンベルクの残っている痕跡があまりにも少なくて、誰にも分からないんだなぁというのが感想です。
それでも中世ヨーロッパ(主に神聖ローマ帝国)の活版印刷前後の事情だったり、グーテンベルクと福沢諭吉との繋がりなどは興味深く読めました。
あと14世紀の騎士階級社会に生まれた「アーサー王の死」他など、活版印刷前後の文学にある時代背景とその結びつきについてなど、とても勉強になりましたね。
ただそれらの文学も19世紀辺りまでは、時代のふるいにかけられ、殆ど認識されることは無かったらしく、とても驚きました。
その中で「グーテンベルク聖書」などの宗教本は、以前として生き残り、後の宗教革命にも繋がるほどの力を持っていた所はやはり興味深いポイントです。
まぁ本来の欲しい情報とは少し違いましたが。笑
本書では、印刷デジタルの革命などにも触れていますが、発行が1998年頃なので古いですね。仕方ありませんが。
グーテンベルクの生涯について知りたいという人に自信を持ってオススメは出来ませんが、その周囲や関連ついて興味がある方とかにはいいかもしれません。
それでは今日はここまで。ありがとうございました。
【ヨハネス・グーテンベルク】Wikipedia