
あらすじ
メキシコのカルテルに君臨した麻薬密売人(ナルコ)のバルミラ・カサソラは、潜伏先のジャカルタで日本人の臓器ブローカーと出会う。
二人は新たな臓器ビジネスを実現させるため日本へ向かった。
川崎で生まれ育った天涯孤独の少年・土方コシモは、バルミロに見いだされ、彼らの犯罪に巻きこまれていく。
海を超えて交錯する運命の背後に、滅亡した王国(アステカ)の恐るべき神の影がちらつく――。
人間は暴力から逃れられるのか。第165回直木賞受賞作。
(KADOKAWAより)
感想レビュー
第165回(2021年・上半期)直木賞受賞作、第34回山本周五郎賞受賞作、このミステリーがすごい!《2022年》第2位ノミネート
ずっと読みたいと思っていた本。
まず読了後の所感としては、とてつもなく黒い力に満ち溢れた作品だったなと。
もう途中くらいから読み終えてしまうのが惜しい作品で、毎日少しずつ頁を捲り続けました。
ちょっと久しぶり食らったといいますか、私の人生BEST小説の棚に入ってしまう一冊となりました。
何から語ればいいのか。
アステカ文明・神話、メキシコカルテル、ヤクザ、黒社会、心臓血管外科医、ナイフメイキング、家族(ファミリア)、麻薬密売人、親殺し少年、少年院、人体密売ビジネス、資本主義、コロナ禍などが、複雑に絡み合って、一つの物語になっていました。
説明が難しいのですが、メキシコの麻薬カルテルで上り詰めた人間が、壊滅危機に陥り、そこから立て直そうとするというのが一つ軸。
そしてそこに、複数の日本人や外国人たちが絡んでいき……と、ちょっと普通(表社会)に生きている人間には、あらすじやワードから想定出来ないような物語なんですよね。笑
もうこればっかりは、読んで全身で浴びるしかないという、物語でした。
コロナ禍の「ダイヤモンド・プリンセス号事件」(モデル)が噛み合いながら、太陽暦とアステカの暦も噛み合わせるという神業じみた展開も、ため息をつきましたね。
強いていえば、彼らのやっていることに対して、警察がもっと介入してきてもおかしくなさそうだったり、物語終盤の畳み方がやや弱いようにも感じましたけど、まぁそれでも過程がここまで良かったら、別にいいかなと思えました。
一応、理論上は可能な作りにはなっていましたので。
基本的には、はじまりと終わりがよければ、ある程度の物語は成立したりするのですが、この作品においては、そういった常識を破壊する力があったように思えました。
畳み方に関しては、ジャンル的にも救いのある作品でもないですしね。
作中では、裏社会の人間たちによる圧倒的暴力や、冷酷さが目立つのですが、私が何よりも脱帽したのは、著者の圧倒的な知識量といいますか、あらゆるパーツを結びつける才能だと思いました。
巻末には、膨大な数の参考文献資料が掲載されており、おそらく載っている参考文献だけでは済まされないような感じもするのですが、やっぱりすごい作品の強さの一つとして、ここにあるのかなと思いました。
裏社会だけではなく、麻薬の扱い、銃の扱い、心臓移植の医療描写や、ナイフメイキング描写、アステカ文明描写など、本当にディティールが細かく、読んでいてびっくりするんですよね。
本を読んだだけで、ここまで書けてしまうのかと。著者さんは、本当に堅気の人ですか?笑
そんな佐藤究さんの作品を私は、今回はじめて読んで、少し調べてみたのですが、驚くことにもと元々純文学の人間だったのですね。
佐藤憲胤(さとうのりかず)名義で、群像新人文学賞からデビューして、十年以上厳しい時代を過ごしていたそうです。
その後、江戸川乱歩賞を受賞し、佐藤究(さとうきわむ)名義で、再デビューを果たしたそうです。
これを知って、確かになるほどなと。作中の内面描写や、情景描写にも納得が出来ました。
それでは今日はここまで。最後までお読み頂きありがとうございました。
良い作品に出会えました。
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