あらすじ
ダンブルドアは逝ってしまった。数々の謎、疑惑、使命、そして「R.A.B」のメモが入った偽の分霊箱を遺して。
17歳、魔法界での成人を迎えたハリーは、分霊箱を見つけ破壊するため、旅立つことを決意する。
一方、勢力を増したヴォルデモートは、ついに魔法界の支配へと動き出す。
残る分霊箱は、どこにあるのか?
あてのない旅は、ハリー、ロン、ハーマイオニーの揺るぎない友情にも、ひびを入れる。
ハリーたちは、分霊箱を探す旅の途中で、古い童話に記された伝説を知る。
それは、ニワトコの杖、蘇りの石、透明マントという3つの「死の秘宝」。
その一つを手に入れたヴォルデモートは、さらに勢力を増していく。死喰い人を総動員し、ホグワーツを包囲する。
激しい戦いの中で、ハリーはついにすべての真相を知る。
「一方が生きるかぎり、他方は生きられない」。
最後に「死」を制する勝者は、はたして……。
(静山社より)
感想レビュー
いやぁ……終わったぁ……長いようで短かったような。
中学生の頃に、私を読書の世界に連れてきてくれた作品の一つでもあるこの物語。
大人になって再読しはじめたのですが、ようやくこの日を迎えることが出来ました。
確実にあの頃より、今の方がこの物語に対する理解度は深まったと思いますし、この機会に読み切ることが出来て本当に良かったです。
まずいつも通り所感から参りますが、もう今更何か言うこともないのですが、最後まで楽しませてくれてありがとう、という気持ちだけですね。
毎度のことですが、この「死の秘宝」も文庫本何冊にもなるボリュームで、
更に最終巻ともあって、物語の波がたくさんあり、色々な伏線が回収され、シリーズ全体の結末、そしてその後となる「十九年後」までもが余さず書かれていました。
ここまで世界観を築き上げた著者のことですから、書こうと思ったらまだまだ書けたのかもしれませんが、最後は結構短めに纏まっているような気もしましたね。
では簡単に最後の物語を振り返っていこうかなと思います。
前巻でダンブルドアがスネイプの裏切りにより、死亡しました。
ハリーとロンとハーマイオニーの3人は、最終学年となる7年生のホグワーツには通わず、ダンブルドアに託された「ヴォルデモートの分霊箱探し」をしようとするところから物語が幕が開きました。
過去6巻とは違い、ダーズリー家とも永遠の別れような展開もあり、この物語がいよいよ終わるのだなぁとひしひしと感じました。
そこから死喰い人たちから逃亡する展開に始まり、相棒のフクロウ「ヘドヴィグ」が殺されてしまったり、かつての仲間たちが負傷したり、死んでしまいました。
今思えばムーディの死体は見つかってないとのことでしたが、やっぱり死んでしまったのですかね。
その後もハリーたちは、危険な分霊箱探しの旅を続け、大きな謎が彼らを阻み、仲違いなど色々ありましたが、徐々にヴォルデモートに近づいていく展開に。
一方で、スネイプを校長とした新ホグワーツが開幕し、カロー兄妹などが送り込まれ、実質的にホグワーツや魔法省などが、ヴォルデモート卿の支配下に置かれようとしていました。
こうした中で、ハリーはダンブルドアの秘密を知り、何度も心が折れそうになりながらも、幾つもの分霊箱に辿り着き、ヴォルデモートとの決戦を迎えます。
そしてセブルス・スネイプがヴォルデモートに殺される展開にまでなって、今まで断片的に明かされてきたスネイプの過去の全貌が明かされるのです!
第33章「プリンスの物語」は個人的にかなり面白かったですし、このシリーズを読み続けてきた読者にとって、とても大事な章であったことは間違いないですよね。
この物語の根幹を担うであろうスネイプの過去と結末を知って、第1巻から思い返してみると、彼の行動が色々と腑に落ちる反面、相変わらずの気持ち悪さもありつつ、笑)
しかし彼の恵まれなかった環境と不器用さと孤独を知って、彼を憎むことなど出来る訳もなく、スネイプ視点で物語を振り返ると色々と見え方が変わってきます。
将来的にハリーも、最高の勇気ある者の名として、自分の子にセブルスの名をつけますし、ダンブルドアが終盤、組分けについて言葉を残していたのも全部回収されました。
何よりダンブルドアに寝返ったあの日から、最後の最後まで、開心術の天才であるヴォルデモート卿に、一度たりとも閉心術で心を解かせなかった彼の能力の高さと「愛」は恐ろしいものであり、素晴らしいものでもありました。
話を戻しまして、ハリーとヴォルデモート軍団との対決は、ホグワーツ校で行われました。
かつての仲間たちが総動員で戦う中、戦場で続々と死に負傷していく。
フレッドやルーピン先生、トンクスまでも亡くなり、児童文学ではあり得ないくらい負傷し、死んでいきます。
個人的にマクゴナガル先生がボロボロになりながら戦っているシーンは、熱いものが込み上げてきましたね。
あまり中心的に描かれてきませんでしたが、ハリーの内面描写を読んでいると、いつもハリーの味方をしてくれる時、「胸が熱くなるような」的な描写が過去にも数回あったような気がしていて、
ハリーにとってロンの母親と同様にこのマクゴナガル先生もハリーにとって母親的な捉え方をしていたのかなと思いました。
そしてハリーvsヴォルデモートの戦いは、最後の最後まで諦めなかったハリーの勝利に終わりました。
王道ですが、これはハリーを含め、皆の勝利とも言える展開でしたね。
やはりネビルの活躍、存在も1年生の時を思うと泣けてきますし、というよりおばあちゃんも一瞬でしたが、かっこよすぎました。笑
あとはマルフォイ一家に触れておきましょうか。前巻に引き続きマルフォイ一家はヴォルデモートの命により、散々な目にあってきましたが、色々あってハリーたちのお陰で命を救われましたね。
過去にあれだけスリザリン純血至上主義であり、マグルたちを嘲笑い、ヴォルデモートを崇拝した身ではありましたが、十九年後の彼の雰囲気は、どこか違ったようにも感じましたね。
先に書いてしまいましたが、物語は十九年後になり、ハリーとジニー、ロンとハーマイオニーが結婚したのであろうことが伺えます。
ハリー家とウィーズリー家の子どもたちを、キングズクロス駅に送り出すシーンで、この物語は幕を閉じました。
因みにネビルは、ホグワーツで魔法薬学の先生になった模様……
最後のエピローグに、この物語を象徴する素晴らしい終わりの文章だったので、引用させて頂きたいと思います。
この十九年間、傷痕は一度も痛まなかった。
すべてが平和だった。
(ハリー・ポッターと死の秘宝より)
まとめ
はい、ということでかなり詰め込みながらこの長い話を振り返りましたが、いかがでしたでしょうか。
結果として、強大な悪であるヴォルデモートを倒し、一応形としてはハッピーエンドとなりましたが、児童文学とは思えない程の死者を出しました。
ここまで読んだ身として、十九年後の間にどのようなことがあったのか、一から知りたいくらいにこの物語に浸れたのかなと思います。
いま全体を思い返しているのですが、シリーズとして、どれも本当に面白かったのですが、
個人的には「炎のゴブレット」「不死鳥の騎士団」辺りは、勢いとクオリティが高く本当に大好きな巻ですね。
でも「賢者の石」のファンタジーの始まりの雰囲気も最高なんですよね〜笑
過去の記事でも書きましたが、このシリーズはどの作品にもある「愛」とか「友情」とかあるのですが、個人的には児童文学という殻を被りながらも、ミステリー形式で物語を読ませ、
更にこの壮大な世界観とユニークな魔法アイテムを巧みに操ったことが、他作品のファンタジーと一線を画したのかなと思います。
そして何よりこの長いお話を最後まで書ききった。
それが本当に何より素晴らしい。
ただのアマチュア物書きが、生活保護の状態で、何年も精神が安定しない中、この創作をやり遂げた。
周囲が変化していく環境の中、これほどまでに壮大な世界観を構築し、幻想の世界に浸り続けることが出来たのは、世界でも本当に稀有な才です。
創作は人の心を擦り切るように摩耗させます。だから誰にでも出来ることではなく、ましてやこの長い話を折れずに書き続けるというのは、なおさら誰にでも出来ることではありません。
この大変さは、きっと常人には理解できないほどの苦痛が伴ったのだと思います。
だから私は言いたい。最後まで書くことを諦めないでいてくれてありがとう。
この物語はきっと何百年、何千年という時を超える力を持っています。
そしてまたそれが未来の誰かに勇気を与え、そのバトンが後の誰かに続いていくような作品だと思いました。
まだまだ書くべきことがあったような気もしますが、熱が入って変に長くなってきましたので、本日はここまで。笑
あと、書き忘れないように先に書いておきますが、日本版では静山社の松岡佑子さんが十年かけてこの物語を翻訳し続けてくださりました。
そのお陰で私たちが英国の小説を読むことができました。本当に感謝でいっぱいです。
ハリー・ポッターシリーズは、ひとまずここで終わりますが、一応予定としては小説ではありませんが、脚本版の「呪いの子」が家にありますので、それをいつか読もうかなと思っています。
番外編も気が向けば、ということでひとまずは普段通りの読書に戻ります。
それでは最後までお読みいただきありがとうございました。
ありがとう!ハリー・ポッター!
ありがとう!J・K・ローリング!
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