
あらすじ
アウシュビッツ絶滅収容所に着いたユダヤ人を、ガス室行きと生存させる組とに選別した医師メンゲレは、優生学に取り憑かれ、子供、特に双子たちに想像を絶する実験を重ねた。
1945年のアウシュビッツ解放後に南米に逃れ、モサドの追跡を逃れて生き延び、79年ブラジルで心臓発作で死亡する。
なぜ彼は生き延びることができたのか? どのような逃亡生活を送ったのか?
その半生の真実と人間の本質に、淡々としかし鋭い筆致で迫った傑作小説。ルノードー賞受賞。
(東京創元社より)
感想レビュー
ルノードー賞受賞作(2017年)
「死の天使」こと、ヨーゼフ・メンゲレ(Wikipedia)を主人公に据えた、ノンフィクション小説。
まず読了後の所感としては、それなりに興味深く読めたかなと。
そもそもノンフィクション小説と聞くと、フィクションなのか、ノンフィクションなのかよくわからなかったのですが、
読み終えた感覚としては、ある程度史実や資料を基に描きつつ、細かい心理描写などが、想像(フィクション)で書かれた小説だったのかなと。
だったらそれはもうノンフィクションとは言えないのでは?と思う気持ちもありますが、まぁいいでしょう。
アウシュビッツ関連を学ぶ人にとって、この男の名を知らずに通り過ぎることは難しい。
それ程までに、彼らが犯した人体実験は悪名高い。ここではその内容は省きますが、およそ通常の道徳的概念では、処理しきれません。
確かにメンゲレや他の医師たちが犯した人体実験は、ナチス大虐殺の一つでしかないかもしれませんが、ここまで非道になれるものかと、多くの人が思ったことでしょう。
そんなメンゲレは、終戦後も裁判で裁かれることなく、1979年2月にブラジルの海で死亡するまで逃げ切ったという経歴があります。
私もそのことだけは知っていたのですが、そもそもどうやって、ナチ狩りやモサド(イスラエル諜報機関)から逃げ切れたのか。
末端の人間や一部の研究者などは、証拠を隠滅し、裁判逃れをしたとも聞きます。
ただし、あのアイヒマンですら捕まり、戦後年々有名になっていくメンゲレがどのような逃亡生活を送っていたのか、無性に興味が湧きました。
※ちなみに映画「アイヒマンを追え!ナチスがもっとも畏れた男(Wikipedia)」の脚本を、フランス人の著者(オリヴィエ・ゲーズ)が担当したことをきっかけに、本書を書く動機になったらしい。
そして、本書はそのことが赤裸々に描かれ、死に至るまでを小説として書ききっていました。
読み終えた今でも、どこまでが本当のメンゲレだったのかは、わかりません。
ただ本書を読み、これらの事柄を絶対に風化させてはいけないと、ただそう思いました。
ナチスだけではなく、私が住む日本を含めて風化させてはいけない出来事は、世界中に山程あって、
そうした中で、本書のように小説として、時の流れと共に風化させないことが、大事なのかなと思いました。
まぁそれっぽいことを書きましたが、時が経てば経つほど、歴史は他人事になり、教科書の一文でしかなくなってしまいますから。
少しでも感情移入させるナラティブ手段の一つとして、小説という形式は有効なのかもしれませんね。
それでは今日はここまで。
ヨーゼフ・メンゲレという人間が気になっている方は、参考までに読んでみるのもありだと思います。
最後までお読み頂き、ありがとうございました。
翻訳は高橋啓さんです。










































