
あらすじ
ホテルの最上階に向かうエレベーターの中で、ナイフで刺された黒人が死亡した。
棟居刑事は被害者がタクシーに忘れた詩集を足がかりに、事件の全貌を追う。
日米共同の捜査で浮かび上がる意外な容疑者とは!?
(KADOKAWAより)
感想レビュー
森村誠一さんの作品を読むのは初めてです。
まず読了後の所感としては、率直に面白かったです。
1975年くらいのベストセラー小説ということで、メディアミックスも派手に行われ、当時を生きていた方にとっては、馴染み深い作品かもしれません。
私は平成生まれなので、全く縁がないまま、約50年後の邂逅となりましたが。
そんな現代に生きる私が読んでも、毎夜続きが読みたくて仕方ないくらい、先が気になる物語でした。
本作は、警察視点を中心に事件が進むサスペンスミステリーなのですが、日本とアメリカで事件が行き来するのが特徴的でした。
最初は、ここからどのように事件が繋がっていくんだと思うほど、何もかもがバラバラなんですが、
戦後などの時代背景を利用し、見事に結びついていく過程は、とても楽しかったです。
複数の視点で起きる事件や、小道具の使い方など、よく出来ているなと思えました。
構成や視点の切り替えなども巧みで、やはり乱歩賞作家は伊達ではありません。
終盤の本作の核とも言える「母の愛」の落とし方については、確かに現代的な読み方として、多少無理があるかなとも感じましたが、全体的に面白さが凌駕したかなと個人的には思えました。
文章にムラがあるので、読みやすい箇所と、そうでないところがあったりもするのですが、世を描く洞察力の高さと、笑ってしまうほど面白い内面描写の書き方をされる方だなと思いました。
情景描写などの筆力も高く、独自の形が確立されているような気がして良かったです。
そういうところを含めても、戦中を生き抜いたこの森村誠一という作家の魅力なのかもしれません。
数年前にお亡くなりになったと知った時に、いつか読もうと思っていたことを思い出し、今回読んでみました。
他作も、いつか機会があれば読んでみようと思います。
あとがきや解説なども、興味深く読ませて頂きました。
それでは今日はここまで。最後までお読み頂きありがとうございました。


































