あらすじ
ドラスティックに変貌する出版業界に伴走して専門紙で問題点を指摘し、マーケティングと流通に対する大胆な発言で刺激を与えているこの10年の思考の束。出版を「産業」として冷静に分析しながら、「本」への思いと業界への探求心が行間からにじみ出る出版論。
(青弓社より)
感想・レビュー
発行が2014年なのでそれ以前の出版業界の流れや、これからの未来にはどうなるのかといった内容がここでは書かれています。
これはどこでもよく聞きますし、本文でも書かれているのですが、出版業界の全盛期では連日の派手なパーティーは当たり前で社員はタクシーを乱用し、日夜飲み歩く。
出版に関してもマーケティングをするなどナンセンスで、売れるものより自分たちが何を世の中に売りたいのかという、今聞けば夢のような世界でした。
ですがスマートフォンが出来て娯楽の奪い合いになった不況の現代では、それが一気に真逆になりました。
マーケティングは絶対必須だし、売れる見込みのない本は、例え面白くても中々出せない。
だから例え面白くなくても売れる見込みがあれば何だって売るしかない。
出版の優先順位がまず絶対的にお金になり、その後に内容となる世界になっています。
ですがこれはどこも似たように、とにかく会社が生き残らなくてはいけない。それはそうです。会社がなくなれば当然面白い本も出版できなくなる。
そういったジレンマを抱えた出版業界の未来はどういった方向に向かっていくのか。
取次や本屋さんと出版業界の内情や、努力、工夫などがこの本には書かれていて、さらにこの本が書かれた当時はまだ電子書籍が今ほど日本では普及していないのでどうなっていくのか。
こういう試みは面白いのではないのかなど興味深く読めました。
また海外などの本屋、業界情報なども読めて面白かったです。
最後に参考程度に目次と著者さんの経歴を引用させていただき、終わります。
第1章 出版という産業
1 「出版不況」の正体とは――雑誌メディアの低迷とデジタル技術の影響
2 不況の大手出版社を支える「その他」部門とは何か第2章 出版流通・販売の変化
1 デジタル技術が変える出版流通
2 取次システムの変容と書店の今後
3 書店が抱えるリスクと将来展望
4 デジタル化でみえてきた書店の役割
5 “街の本屋”の復活をめざすモデル書店第3章 闘うアメリカの独立系書店
1 アメリカの書店組合ABAのマーケティング戦略
2 アメリカ最大の独立系書店パウエルズのビジネスモデル第4章 いよいよ本格化する電子出版
1 電子書籍元年とは何だったのか
2 デジタル化で広がる出版の契約
3 日本ではなぜ学術書の電子化が進まないのか第5章 海外の出版事情と日本の国際化
1 海外に広がる日本の出版コンテンツ――にわかに活気づく出版社の版権ビジネス
2 アメリカで拡大するマンガ市場――ルポ 成長急なアメリカ“MANGA”市場
3 ドイツの出版業界が描く将来像「五十五のテーゼ」
4 中小書店の世界組織――ニューヨークのブックエキスポで聞いた話
5 海外に打って出る韓国出版社――国内市場の縮小傾向で日本はどうする
6 東京国際ブックフェアの成り立ちと今後
7 「出展者」が増え、「出版社」が減るTIBF第6章 出版産業の課題と動向
(出版産業の変貌を追うより)
1 二〇〇七年の出版産業
2 二〇〇八年の出版産業
3 二〇〇九年の出版産業
4 二〇一〇年の出版産業
5 二〇一一年の出版産業
6 二〇一二年の出版産業
7 二〇一三年の出版産業
初出一覧、あとがき
星野 渉(ホシノ ワタル)1964年、東京都生まれ。文化通信社取締役編集長、日本出版学会理事・事務局長、NPO法人本の学校副理事長、東洋大学非常勤講師。共著に『電子書籍と出版』(ポット出版)、『白書出版産業2010』(文化通信社)、『読書と図書館』(青弓社)、『出版メディア入門』(日本評論社)、『オンライン書店の可能性を探る』(日本エディタースクール出版部)ほか。