あらすじ
文字を持たぬ辺境の島に生まれ、異国の師に導かれて書物に耽溺して育った青年は、長じて憧れの帝都に旅立つ。
だが航海中、不治の病に冒された娘と出会ったがために、彼の運命は一変する。
世界じゅうの書物を収めた王立図書館のある島で幽閉されるが――
デビュー長編にして世界幻想文学大賞、英国幻想文学大賞、ジョン・W・キャンベル新人賞、クロフォード賞の四冠を制覇した傑作本格ファンタジイ。
(創元社より)
感想・レビュー
原題『A Stranger in Olondria』
たまた出会った本なのですが、あらすじが少し気になったので読んでみることに。
まず読了後の所感としては、物語としてはあまり楽しめない小説だったなぁ…というのが正直なところですかね。
世界観はオリジナリティ溢れていて、情景描写や言語設定とかにも拘っていて、すごく魅力的です。
物語もラインに乗った時は面白くなるんですけど、とにかく脱線が多すぎて、それが物語の没入感を妨げてしまっているのかなと思いました。
解説とかによるとその脱線は意図的に、著者さんの好みでそうしているらしいので、その意思は尊重したうえで言わせてもらいますが、
それだったら神話とか別の掌編は「設定・資料集」とかに付属して、あくまで物語で勝負して欲しかったですね。
最後の天使の過去の物語とかは、登場人物に由来するので、それなりに読めるんですけど、全く関係ない掌編物語とかもオリジナルでくるので、とにかく読むのが大変なんです。
おまけに著者さんが詩人の一面もあるので、日本語の詩的な文章に翻訳するから、また変に長くなって、物語の没入感を妨げてしまうポイントが多すぎるんですよね。
とはいえこの文章は、英語だから読みやすいという訳でもないと思うんですよ。オリジナル言語もありますし、詩的な文章はどんな言語でも読みにくいのは共通なので。
個人的には、物語に詩的さがあるのは別に良いんですよ。でもそれは物語の没入があっての前提だと思っているので、、
詩が書きたいならば「詩集」にすれば良いだけの話で、「小説」って、個人的には何やってもいいと思うんですけど、ある程度、主人公の物語が軸にあって欲しいとは思うんですよね。
たとえそれが文学であっても。
他にも主人公が変わる作品で言えば、群像劇や連作短編などもありますが、一時的に人称は固定されるので、工夫や技術があれば読みやすく、面白くなるんです。
もちろん本作も主人公の話ではあるんですけど、それ以外に割いている文章が多すぎるんですよね。
とにかく物語とそれ以外(本編別の物語、情景描写、詩)のバランス配分が壊滅的に悪い。
導入の「文字を持たない青年が、異国の地からやって来た家庭教師に文字を教えてもらって、書物に耽溺し、異国の地へと向かう」という魅力的なあらすじや、読み進めるうちに、伏線が繋がってくる面白い展開があるだけに、本当に勿体ないなぁと思ってしまいました。
和訳タイトルの「図書館島」という単語も作中にはありませんし、どういう意図でこうなったのか。
色々と疑問点も多いですが、そもそも関心がそこまでわかない。まだその領域にすらいってないんですよね。
一応、本作はデビュー作なうえに、海外で4冠の賞を獲得しているのですが、正直なところ、これで?とは思ってしまいましたね。
まぁ物語は感性なので、色々賛否があって当たり前だと思うので、私は本作には正直にそう思ってしまった、というだけです。
それでは今日はここまで。
お読みいただきありがとうございました。ではまた。