
あらすじ
謎の暗号文を苦心のすえ解読したリーデンブロック教授と甥の助手アクセル。
二人は寡黙なガイド、ハンスとともに地球の中心へと旅に出た。
そしてそこで三人が目にしたものは……。
前人未到の地底世界を驚異的な想像力で自在に活写したヴェルヌの最高傑作を、圧倒的な臨場感あふれる新訳で。
(光文社より)
感想レビュー
19世紀フランスの小説家でありSFの「父」「祖」とも呼ばれるジュール・ヴェルヌ。
いくつか有名どころがあるのですが、ひとまず本作から手にとってみました。
さて、まずはいつものように読了後の所感から。
最初から最後まで、少年気分、冒険心をくすぐるドキドキでワクワクな物語だったかなと。
当時の科学力と現代では全然違う中で、著者のもつ科学的探究心と無限大の空想力で書かれたことが、読んでいてすごく伝わりました。
時代的に仕方ないのですが、間延びを感じる部分も多少あります。しかし物語の起伏、展開の運び方など、現代に通ずるものを感じて、すごく驚きました。
描写も一つ一つ丁寧で、個人的にはいい方に受け入れられたかなと思います。
解説によると、ダーウィンの『種の起源(進化論)』が刊行されたのが1859年で、本作がその数年後の1864年と、非常に時の流れを感じます。
簡単に物語を振り返ります
偏屈で変わり者のリーデンブロック教授とその甥であるアクセルが、謎の暗号文を解読したことにより、寡黙なガイド・ハンスと共に、地球の中「地底世界」を目指すという流れ。
最初は緩やかな展開なのですが、徐々に人類が見知らぬ世界が明かされていきました。
ただ最後まで地底には辿り着くことは出来ませんでした。しかしそれでもたくさんの地底世界を見ることが出来ました。
3人の個性も相まって、面白い冒険物語にもなっていました。
確かに明らかにぶっ飛んだ箇所があったり、時代的な科学的知恵の間違い、著者の技術的なミスなどもあります。
ですが、個人的にはそれらを凌駕する空想力と冒険心のおかげで楽しめたかなと思いました。
科学的間違いに関しては、現代SFもいずれ数百年後に訪れる宿命なので、それを含めて楽しむのがSFとしての醍醐味でもあるのかもしれません。
みんな一度は考えたことがある「この地球の中には何が詰まっているんだろう?」という疑問、子供心から作られていった作品だったかなと。
普通の人は、地球の成り立ちや、地殻の存在や構造を覚え、それなりに過ごしてしまうものなのですが、確かに本作ほど、中に中に入っていく作品はありませんでした。
というよりも、あんな形で地球の内部に入っていく、という発想からもう面白いですよね。笑
そもそも地球や宇宙の成り立ち、本作でいうところのマントルなども誰もこの目で見たことはないので、あくまでも仮説、推定にすぎません。
そこが面白いところでもあり、歯がゆいところでもありますが。
冒険中は、とてつもない恐怖もありましたが、それ以上に未知への感動というものもあって読み応えがありました。
あと話変わりまして、光文社文庫のプロフィール紹介がすごく面白かったので一部引用させて頂きました。
ジュール・ヴェルヌ(1828~1905)
フランス西部ペイ・ド・ラ・ロワール地方のナントで生まれる。
幼少期から『ロビンソン・クルーソー』などの冒険小説を愛し、12歳のとき未知の国への憧れから密航を試み捕まる。そのとき「これからは空想のなかだけで旅をする」と言ったという。
(Wikipediaと光文社より)
めっちゃくちゃ笑いましたけど、こういう方が書き残した物語が、色々な人の力によって、数百年後の国も時代も違う人々が読める環境は、本当に感謝しかないです。
それでは今日はここまで。
最後までお読みいただきありがとうございました。
翻訳は高野優さんです。