あらすじ
ある事件で妻子を亡くした拓海は、大物地面師・ハリソン山中のもとで不動産詐欺を行っていた。次に狙うのは市場価値100億円という前代未聞の物件。
一方、定年間近の刑事・辰は、彼らを追ううちにハリソンが拓海の過去に関わっていたことを知る。
一か八かの詐欺取引、難航する捜査。双方の思惑が交錯した時、衝撃的な結末が明らかに──。
圧倒的なリアリティーで描く、新時代のクライムノベル。
(集英社より)
感想レビュー
どうも、絶賛大人気中のNetflixドラマシリーズで本作に魅了された一人です。
数年前に私が普段活用している「読書メーター」というサービスの献本プレゼントキャンペーンにて、発売直後の「地面師たち」を応募したような気がするものの、特に思い出すことなく月日が流れていきました。
しかしドラマに出会い、そのクオリティーの素晴らしさに『VIVANT』以来、原作の方を読んでみようとすぐさま書店に駆け込みました。(VIVANTはドラマが先です)
個人的には、あまりにも役者さんの印象が強いまま原作を読むのも少し違うなぁと思い、一ヶ月程期間をあけて読んでみました。
そんな感じで読んでみた所感としては、登場人物たちが自動的にドラマの役者さんたちに脳内変換してしまい、期間をあけた意味は特になかったですが、それなりに楽しめました。笑
本作は2017年に実際に起こった「積水ハウス地面師詐欺事件」をモデルに、大まかな話の流れは一緒です。
しかし細かい部分は、原作とドラマでも多くの違いがありしました。
例えばドラマ版では、拓海の実家は不動産会社でしたが、原作小説では医療機器の販売会社であったり、そもそも拓海とハリソン山中の出会い方も違いましたね。
他にも拓海がどうやってハリソンから信頼されるようになったのか。
ドラマでは「一緒に仕事をしてもう5年になる」ということしか分かりませんでしたが、最初に任された仕事から、地面師として誘われるまでが描かれていました。
あとは長井くんの容姿や設定も違ったり、女優の池田エライザさんのような女性刑事も原作には存在しませんでした。
名シーンの一つである、刑事の辰さんが最後に無惨に殺されることも原作ではありませんし、最後まで生きています。
辰さんの夫婦関係も原作では良好です。
役者さんたちの演技でいうと「最もフィジカルで最もプリミティブで最もフェティッシュ」や「印鑑大丈夫ですよ」など、色々と細かい台詞は、ドラマ版限定のものらしいです。
青柳やオロチなどの描写も控えめですし、ハリソンもイカれてはいるものの、ドラマほど怖くありません。
それに原作では少し終わり方も違いましたしね。
ドラマ版でのハリソンが竹下を蹴り殺したあのやばすぎるシーンも、原作ではそのままオーバードーズで殺してますし、それをあとで知るだけなんですよ。
こちらドラマ版での台詞↓
竹下「逆にお前を殺そうと思ったんだよ。さすがだよ。お前はそれを見越してずーっと俺をつけてた。俺が死ぬ理由なんていくらでもあるもんな。このままシャブでも打ち込んでオーバードーズに見せかけて殺す。そんなこっだろ?それ撮った動画をくそ高えウイスキー飲みながら見てチンポ勃たせるつもりだったんだろうが!」
ハリソン「違いますよ。(中略)オーバードーズ?そんな誰もが思いつくような安っぽい殺し方はあなたには似合いません。裏切りの代償としても対価に合わない。最もフィジカルで、最もプリミティブで、そして最もフェティッシュなやり方でいかさせていただきます。」
(地面師たちドラマ版より)
これ新庄さんどんな気持ちで観てたんだ、笑)とは思いますが、実際この殺し方は衝撃的でした。
麗子や竹下とかの年齢や詳細を知れるのは小説にしかないものなので、どっちもそれなりに魅力があるのですが、個人的には「やっぱりドラマ版が面白すぎる改変だったんだなぁ」と感心しました。
騙される側たちの掘り下げ方も絶妙な臨場感を味わえましたし、そもそも交渉シーンは文章だと間がないので結構淡白なんですよね。今思えば当たり前なのですが。
あと原作では結構ご都合主義な部分があったりするのですが、ドラマではリアリティをより高めることにも成功していました。
実際詐欺って地味なシーンなんですけど、よくもこの小説をあそこまでテンポ感のあるスタイリッシュで派手な作品にしたなと。
もちろん生みの親である新庄耕さんがいなければ、ドラマ版がないわけなので、原作者やドラマ班、両方ともに感謝ですね。
それに原作では続きがありそうなエピローグもあって、実際に『地面師たち ファイナル・ベッツ』が発売されています。
あらすじを読んだ限りハリソン以外は誰もいなさそうですが、とても気になります。
まぁこれだけ人気ですと、ドラマ版も続編があってもおかしくなさそうですね。
あと巻末にはドラマ版の監督である大根仁さんの解説もあり「そもそもどうしてNetflixドラマだったのか?」「これはハリソン山中の物語なのかもしれない」などの話も面白いのでおすすめです。
それでは今日はここまで。
最後までお読みいただきありがとうございました。