
あらすじ
あたしは、月のように死んで、生まれ変わる――この七歳の娘が、いまは亡き我が子? いまは亡き妻? いまは亡き恋人? そうでないなら、はたしてこの子は何者なのか?
三人の男と一人の女の、三十余年におよぶ人生、その過ぎし日々が交錯し、幾重にも織り込まれてゆく、この数奇なる愛の軌跡。
プロフェッショナルの仕事であると選考委員たちを唸らせた第一五七回直木賞受賞作、待望の文庫化。(特別寄稿:伊坂幸太郎)
(岩波書店より)
感想レビュー
第157回(2017年・上半期)直木三十五賞受賞作
もう何年も前からチェックしていた作品で、いつか読めたらなと思っていました。
まず読了後の所感としては、この手の作品として面白かったです。純粋に楽しめました。
あらすじから結構面白そうだなと前から思っていたので、おまけに直木賞作だし、逆にどのような見せ方をするのだろうと期待しながら読み始めました。
簡単に言うとこの物語は『瑠璃(るり)』という女性が、死んでは何度も生まれ変わり(現代的な言葉で言うなら転生)、それに関わった人間が繋がっていくという構成です。
瑠璃という女は、人によっては娘、人によっては妻、恋人など、転生していくなかで様々な関わりを持ちます。
良いこともあれば、辛いこともあり、それが複雑な人間関係を生み出していて、物語を魅力的にしていました。
その中でもやっぱり良いなと思うのは、構成ですよね。
物語が進んでいく中で、転生していく瑠璃を中心に、あらゆる点が繋がっていく面白さ。
少しメタ的な考え方をすれば、だからこの人間はこの職業にしているのか、ここに住んでいたのかなど、この絶対に線にして繋げてやるぞという強い意思を感じるといいますか、執念のようなものを感じました。
だからこそ、流石に繋がりすぎて、特に最終盤などはご都合過ぎなのでは、という見方も出来なくはないですが、そもそも前世や転生という要素があるので、ある程度は溜飲を下げる地盤が固められていたのかなと思います。
物語的にも、ただ良かったねっていう話でもなく、人を愛する気持ちだったり、人を疑う気持ちだったり、そういった人間的な部分を描きつつ、笑えて、少しホラーにも思える見せ方が、個人的には面白かったなと思いました。
あと最後に一つ秀逸だなと思ったのが、この瑠璃という女性が、笑う時や冷笑するときなど、舌を出すという癖があるのですが、この癖が作中すごい活躍していて、面白いのです。
この癖を利用するだけで、つい笑ってしまうシーンになったり、ぞっと怖くなってしまうシーンになったり、ほっこりするシーンになる。この見せ方が、素晴らしいなと思いました。
という感じで、佐藤正午さんの作品を初めて読みましたが、実は少し前の本屋大賞2026でノミネートされた「熟柿」が、とても気になっているので、いつか読んでみたいと思います。
追記:文庫版では、伊坂幸太郎さんの少し変わった寄稿もありますので、おすすめです。
それでは今日はここまで。
最後までお読み頂きありがとうございました。
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