あらすじ
過去に犯した罪をどのように裁き、どのように受け入れるか――。
数々の賛辞に迎えられて、ドイツでの刊行後5年間に25カ国で翻訳され、
アメリカでは200万部を超えるベストセラーに。
15歳のぼくは、母親といってもおかしくないほど年上の女性と恋に落ちた。「なにか朗読してよ、坊や!」──ハンナは、なぜかいつも本を朗読して聞かせて欲しいと求める。人知れず逢瀬を重ねる二人。だが、ハンナは突然失踪してしまう。彼女の隠していた秘密とは何か。二人の愛に、終わったはずの戦争が影を落していた。
(新潮社より)
現代ドイツ文学の旗手による、世界中を感動させた大ベストセラー。
感想・レビュー
翻訳:松永美穂
たまたま映画『愛を読むひと』を観て、これは原作も読んでみたいなと思うほど素晴らしい作品だったので、本屋さんで探してきました。
普段は原作を先に読んでいる場合、その映画を観ることもあまりないのですが、本作だけはどうしても読んでみたい作品の一つでした。
ハンナ・シュミッツに関しては、演じたケイト・ウィンスレットが良すぎて脳内にこびりついているので、そのまま脳内再生して読みました。
ケイトは『タイタニック』の頃に比べて、顔も身体も歳を重ねておりましたが、それが非情にこの作品にマッチしていたように感じます。
個人的には、映画の最後のシーン(ミヒャエルが娘に真実を話そうして終わる)に胸を打たれたのですが、あれは監督が新たな作り出したオリジナルシーンだったのですね。
ひとまず映画の感想はこの辺にしておいて、まず読了後の所感としては、やっぱり深く考えさせられる作品だなと。
内容を知っているので気持ち二周目のような読み方をするしかなかったのですが、構成は映画の流れとほぼ同じで、小説にしかないシーンと逆に映画にしかないようなシーンもあったと思います。
映画ならではの役者の表情だけで感情を訴えてくる表現の仕方も、小説の少しドライにも感じるミヒャエルの内面表現と葛藤も正直どっちも面白い。
おそらくこれは、この作品の設定を決めた段階でもうかなり勝利しているようにも思えました。
準備が9割といっても過言ではない小説ですが、主役二人の「年の差恋愛」という関係構造と、背景にある「ナチ前と後のドイツ」という環境構造から浮かび上がってくる物語。
そこに『文盲』という要素を一つ足すことにより、物語的面白さも当然ありますが、それ以上に何か目に見えない『ひと』が描かれていました。
主人公のミヒャエル(15歳)とハンナ(36歳)の出会い。
そこから肉体関係に陥る二人の関係性の描き方は、二回読むと違った楽しめ方が出来るかと思います。
ハンナはなぜ『文盲』なのかの過去が明かされていませんが、故に、ミヒャエルに朗読をお願いする。
このハンナが文盲であるという事実を読者は知っているか知っていないかで、物語の見方が全然変わってきます。
あとは年を重ねて読みなおすとまた新たな発見ができそうな作品ですね。
初見では純粋に恋愛関係を楽しめつつ、ミヒャエルのティーンエージャーっぷりにも笑いつつ、めっちゃくちゃ楽しいんだろうなぁと可愛さもあります。笑
その後のハンナの失踪から、裁判での再会。裁判での理不尽な罪のなしつけ、ハンナの無期懲役確定後の朗読、そしてまた再会し…ラストまで本当に目が離せませんでした。
ミヒャエルが抱えた良心の呵責とハンナの犯した罪と罰
ハンナの生真面目な性格、そして文盲ならでは矜持にミヒャエルは誠実故により苦しみ、やがて朗読者という答えにたどり着きます。
ここに至るまでミヒャエルやハンナの行動には、本当に人ぞれぞれ色々な考え方があると思います。
それがまさに文学の良いところだなと、久しぶりに思えましたね。
私もあれこれ彼らの行動に答えを出そうとしたのですが、何かしっくりくる答えが見つからないんですよね。
ミヒャエルは果たして逃げたのか?とか、ハンナのプライドの高さは文盲にならないと理解出来ないのか?とか。
他にも細かい描写に色々と考えてはあぁだこうだ、自分がミヒャエルだったら、ハンナだったらどうするのか?とか本当にこの物語には何か惹かれるものがありました。
ホロコーストが背景にある作品は、映画や小説など数え切れない程ありますが、このような描き方、切り口もあるのだなと。
そしてこの作品は個人的に自信を持ってオススメできます。
是非気になった方は、読んでみてください。
何か他にも書きたいことがあったのですが、なぜか今日は上手く感想が書ける感じがしないので、この辺で切り上げます。
お読みいただきありがとうございました。