あらすじ
その火を飛び越して来い。永遠の青春がここに――。
古代の伝説が息づく伊勢湾の小島で、逞しく日焼けした海の若者新治は、目もとの涼しげな少女初江に出会う。にわかに騒ぎだす新治の心。星明りの浜、匂う潮の香、触れ合う唇。嵐の日、島の廃墟で二人きりになるのだが、みずみずしい肉体と恋の行方は――。困難も不安も、眩しい太陽と海のきらめきに溶けこませ、恩寵的な世界を描いた三島文学の澄明な結晶。【新装版】
(新潮社より)
感想・レビュー
第一回新潮社文学賞受賞作品
三島由紀夫は二冊目。
意外にも純然たる恋物語で驚きました。
それでも描写力や辞書のように整えられた言葉遣いと詩的さは健在。
前半に少しずつ吐いた描写を、綺麗に回収していく様もやはり巧みであります。
解説にも書いていましたが、三島はこれを書く前、実際に二度も三重の島に行っているらしいですね。
ギリシャ古典をモチーフにするよりか、島の優しさや自然に触れたうえで、このような物語になったのではないだろうかと、確かに思えました。
この辺りの三島由紀夫は、ロマン主義に回帰しているのかもしれません。
人間の温かみが見えた瞬間には、少しうるっときます。ええ子や、と。