
あらすじ
京都でテーラーを営む曽根俊也。
自宅で見つけた古いカセットテープを再生すると、幼いころの自分の声が。
それは日本を震撼させた脅迫事件に使われた男児の声と、まったく同じものだった。
一方、大日新聞の記者、阿久津英士も、この未解決事件を追い始めーー。
圧倒的リアリティで衝撃の「真実」を捉えた傑作。
(講談社より)
感想レビュー
本屋大賞2017(第14回)第3位ノミネート、このミステリーがすごい!《2017年》第7位ノミネート
グリコ・森永事件
1984年(昭和59年)から1985年(昭和60年)にかけて、丸大食品、森永製菓、ハウス食品、不二家、駿河屋などの食品企業や社長を誘拐、脅迫した。
警察庁広域重要指定114号事件になったが、犯人グループは捕まらず、2000年(平成12年)に時効が成立。
昭和史に残る、前代未聞の未解決事件となった。
本作は、そのグリコ・森永事件(Wikipedia)を題材にした小説。
まず読了後の所感としては、力強さを感じる作品でした。
物語としての面白さはもちろん、実在した事件とはいえ、フィクション部分も多い。そのフィクション部分は、著者の想像で描かれていく登場人物たちが、魅力的でした。
内容は重く悲しいものですが、最後に救いがあるような内容になっていました。
物語は「テーラーの曽根」と「ジャーナリストの阿久津」。この二つの視点で物語が動いていき、最終的に交錯していきます。
それ自体はオーソドックスなものですが、事件そのものが未解決事件なので、どのような展開に落としていくのか、すごく気になりながら読んでいました。
フィクションの部分になりますが、日本とイギリス(イングランド)が、徐々に交錯していき、犯人と邂逅する過程は、とても面白かったです。
特に阿久津がイギリスで犯人と対峙し、過去や思想、動機に関する会話内容は、当時の日本社会と英国社会がしっかりと活かされているように思えて、とても魅力的に感じました。
阿久津自身は、ジャーナリスト魂が発揮して、大事件にしてはしょうもないと一蹴していましたが、笑
常に先が気になる展開で、最終盤に感動もあり、基本的に言うことはありませんが、強いていうならば、もう少し内容をコンパクトにして欲しかったかなと思いました。
特に序盤の絶妙な引き伸ばしが多く、もっと早く事件を語ってくれても別に良かったかなと、読了後に伏線や展開を回顧していくうちにそう思いました。
まぁただ、面白さが凌駕していると個人的には思えたので、それも本作の味だと思っておきます。
私は、この事件が起きた頃はまだ生まれていなかったので、全然知らない事件だったのですが、特に関西人の記憶には、馴染み深い人もまだ多いかもしれませんね。
作中でもそうでしたが、犯人グループは、警察や企業、メディアに対して巧みに立ち回り、仕手によって株価を操作し、利益を得るという知能的な側面と、暴力的な両面を兼ね備えていたようで、
当時の科学捜査レベル、テクノロジー力や、証券会社の規制の弱さなど、まさに時代の穴を突いた事件となりました。
被害にあった人たちも多く、当時の滋賀県本部長が焼身自殺で亡くなられていたりと、混乱を極めていたように思います。
確かにこの事件では、直接的な死人はいませんが、作中の望のように事件によって、何の罪もない人間たちが、間接的に被害を受けていたかもしれないと考えることが大事に思えました。
著者の塩田武士さんは、関西学院大学卒業後に神戸新聞社に勤務していたらしく、その経験が阿久津の内面を生み出したのかなと思えました。
というか経歴が作家としては、もったいないくらい強いですね。笑
それでは今日はここまで。
最後までお読み頂きありがとうございました。














































