
あらすじ
華氏451度──この温度で書物の紙は引火し、そして燃える。
451と刻印されたヘルメットをかぶり、昇火器の炎で隠匿されていた書物を焼き尽くす男たち。
モンターグも自らの仕事に誇りを持つ、そうした昇火士(ファイアマン)のひとりだった。
だがある晩、風変わりな少女とであってから、彼の人生は劇的に変わってゆく……
本が忌むべき禁制品となった未来を舞台に、SF界きっての抒情詩人が現代文明を鋭く風刺した不朽の名作、新訳で登場!
(早川書房より)
感想レビュー
原題:『Fahrenheit 451』
1953年のアメリカにて発行された本作。翻訳は伊藤典夫さんです。
SF界隈でもよく聞く作品の一つで、前々から気になっていて、ようやく読むことができました。
さっそくですが、まず読了後の所感としてはいまいち掴みきれなかったかなぁという印象でした。
あらすじにもある「華氏451度──この温度で書物の紙は引火し、そして燃える」などの引きや、
書物が禁制になった世界観は魅力的で面白いのですが、ストーリーの展開から結末までがいまいちでしたね。
おそらくこれは「なぜそういう世界になってしまったのか?」という純粋な読者の疑問に、細部まで明かされなかったモヤモヤがそうさせるのかもしれません。
ひらめき先行でそのまま走ってしまい、世界観を熟考しなかった結果、出落ち感が強くなってしまった。
主人公が社会に反抗し、逃亡する辺りはきっと誰もが楽しめる展開になってきているのですが、その結末もあまりぱっとしなかった、というのが正直なところでしょう。
そして詩的な文章が読みにくいです。
ストーリーよりも文章が気になってしまい、物語の没入感を妨げてしまう。
これは詩的な文章を書く作家(特に海外小説)あるあるで、私もこの手の作品に出会うと必ず感想に書くのですが、このタイプの作家がエンタメ系な世界で読ませようとすると必ずぶつかる問題です。
それでも私はまだ読める方なので、とにかく物語の全体の質として評価したいところ。
しかしそこも曖昧な部分が多く、ここまでの世界観があるならばもっと突き詰めていけば、展開の見せ幅が広がり、SFとしてももっと魅力的で読みやすい作品になったのになぁと。
最初は時代背景もあるし仕方ないかなとも思ったのですが、発行年が1953年なので、それくらいなら十分にわかりやすい作品がもっと過去の作品にもありますし、これはそういう問題でもなさそうですね。
純粋にこの世界を説明するには短すぎるというのもありますが。
ただ書物が存在する意味と存在しない世界がどういうものなのか。
これは一人の人間が考えた一つの例にすぎない世界ではありますが、それでもこういう試みや創造力に敬意を払いたいと思いました。
それでは今日はここまで。
最後までお読みいただきありがとうございました。