あらすじ
海軍の保護のもとオホーツク海で操業する蟹工船は、乗員たちに過酷な労働を強いて暴利を貪っていた。“国策”の名によってすべての人権を剥奪された未組織労働者のストライキを扱い、帝国主義日本の一断面を抉る「蟹工船」。近代的軍需工場の計画的な争議を、地下生活者としての体験を通して描いた「党生活者」。29歳の若さで虐殺された著者の、日本プロレタリア文学を代表する名作2編。
(新潮社より)
感想・レビュー
「小林多喜二蟹工船プロレタリア文学」という文学史を習うときに必ず覚えさせられる単語。笑
小林多喜二の小説を初めて読んでみました。
資本主義社会の闇がリアルに、文学的に描かれていて、悲しいけど面白い。船の中での汚さと生臭い匂いが読んでいて伝わってくるようでした。
「党生活者」も緊張感のある展開と文体で、夢中になって読みました。
そして小林多喜二は、党生活の結果、表向きは急死?との発表らしいのですが、身体の痕などから警察の拷問が濃厚で、29歳という若さで死亡。
作品内でも彼の奥底にある信念がひしひしと見え隠れしていて、善悪は抜いてそういうところに好感がもてます。
流石に死ぬところまでは想像出来ませんが、確かに捕まってそうな雰囲気はあります。
個人的には寡作なのが勿体ないな、と思うほどに小説的才能を感じました。
今振り返ってもこの二作品とも結構良かったなと思いますね。
で少し話はそれますが、小林多喜二は、志賀直哉を私淑していて『蟹工船』を志賀に贈って、褒めてもらったことがあるそうです。
そして多喜二は、志賀直哉の奈良の家を訪ね、一泊したこともあり、多喜二が虐殺されたときにも、志賀は母親にお悔やみと香典を送ったのだそうだとか。
こういった文学者たちの繋がりは、いつの時代も良いものだなと思います。時代が時代だけに、悲しい結末ですが、だからこその作品が今まで残り続けているとも考えられます。
文学と歴史というのは、文字を獲得した人類の奇妙な繋がりがあるのかもしれません。
それでは今日はこの辺でおわります。
お読み頂きありがとうございました。