あらすじ
昨日、私は拳銃を拾った。これ程美しいものを、他に知らない――いま最も注目されている作家・中村文則のデビュー作が装いも新たについに河出文庫で登場! 単行本未収録小説「火」も併録。
「次は…人間を撃ちたいと思っているんでしょう?」
(河出書房新社より)
雨が降りしきる河原で大学生の西川が<出会った>動かなくなっていた男、その傍らに落ちていた黒い物体。圧倒的な美しさと存在感を持つ「銃」に魅せられた彼はやがて、「私はいつか拳銃を撃つ」という確信を持つようになるのだが……。TVで流れる事件のニュース、突然の刑事の訪問——次第に追いつめられて行く中、西川が下した決断とは?
「衝撃でした。より一層、僕が文学を好きになる契機になった小説」(又吉直樹氏)
「孤独は向かってくるのではない 帰ってくるのだ」(綾野剛氏)
他、絶賛の声続々! 新潮新人賞を受賞した、中村文則、衝撃のデビュー作。ベストセラー&大江賞受賞作『掏摸(スリ)』の原点がここに!
感想・レビュー
第34回新潮新人賞受賞作
表題作「銃」と「火」の二作品が収録。
中村文則さんデビュー作。初読みになります。
「銃」は中盤から後半に掛けて素晴らしく良くなっていった印象。
主人公は、何よりも撃つと決めた最低女を撃たずに、電車の中で、よくいるどうでもいい腹の立つおっさんを最後の最後であっさりと殺してしまいます。
これが言いようのない、人間の性を描いているようで、本当に驚きと、共感と、恐れのようなものを抱きました。
最後の「おかしいなおかしいな」の連続二言には、文学的な美しさすら感じてしまいました。
「火」も中々イカれた内容ではあるけれど、やはり終わりの一文に注目してしまう良さがありました。
中村氏本人も後書きで書いていたように、こういった文学も必要だと感じました。
おそらく多くの作家が書けそうで書けないエネルギーに満ちた作品だったと思います。
まさに直球文学を読まされたような、そんな気持ちにもなりました。