アルジャーノンに花束を【あらすじネタバレ感想】知能の低い者が、賢くなる手術を受けるとどうなる?

あらすじ

32歳になっても幼児なみの知能しかないチャーリイ・ゴードン。そんな彼に夢のような話が舞いこんだ。大学の先生が頭をよくしてくれるというのだ。これにとびついた彼は、白ネズミのアルジャーノンを競争相手に検査を受ける。やがて手術によりチャーリイの知能は向上していく…天才に変貌した青年が愛や憎しみ、喜びや孤独を通して知る人の心の真実とは?全世界が涙した不朽の名作。著者追悼の訳者あとがきを付した新版。

(早川書房より)

感想・レビュー

有名な作品で、タイトルからずっと気になっていて、ようやく読めました。

アメリカの小説ですかね、ヒューゴ賞を受賞しています。

まずいつもの読了後の所感としては、何かとんでもないモノを読んでしまったなぁ、という感じでしょうか。

〈傑作〉といえばそうですけど、でも本作は、何か、そういう言葉の枠組みすら超えていきそうな、得体のしれない力のある作品だったように思えます。

本作を簡単に纏めると、知能の低い者が、人工的に賢くなるような手術を受けて賢くなるとどうなるの?という感じでしょうか。

物語の主人公は、チャーリイ・ゴードン。32歳。IQ6、70辺りの知的障害者。

出版年が1959年なので、翻訳では白痴という言葉でも訳されていました。

そんなチャーリイの【経過報告】という名の、日記形式で、物語は進んでいきます。

そしてまず驚いたのは、序盤からチャーリイの一人称なので、ひらがな乱用、句読点もめっちゃくちゃ、誤字脱字、間違った言葉の使用など、中々読みにくい文章から始まりました。

こんな小説をまず読んだことがないので、とても新鮮でしたね。

そこからチャーリイ目線の捉え方で物語は進んでいき、ある段階で頭が賢くなる、という手術を受けます。

ここから徐々に文章が上手くなっていき、中盤過ぎた辺りでは、もう笑ってしまうほど、賢い文章になります。

話の内容も、徐々に徐々に、絶妙なタイミングで、高い知能的なものになっていき、そのチャーリイを囲む環境や人たちの変化など、とても魅力的で面白かったです。

まぁこの作品に関しては、一概に面白いという言葉だけで片付けてはいけませんが、それだけに内容も悲しい気持ちにもなりますし、でもチャーリイが手術前に見ていた景色と、術後の景色は全然違うものだったとわかる過程は、中々お目にかかることの出来ない表現の仕方だったなと、とても関心しました。

知識を得れば得るほど、人格も周囲の環境も全く変わっていき、そして最後にはまた白痴に戻るというシナリオの内容にも、心を打たれました。

あれだけ利口になることを求め、ようやく手に入れ、そして最後には失う。

手術の内容や、なぜ知能を失ったかの詳細はありません。なのでその辺りの設定は、SF作品のように読むことをオススメします。

知能を獲得していく上でのチャーリイの過去は、正直、悲しいことばかりです。何なんだ、あの母親と、皆が思うでしょうし、実際にあの母親の行為や暴言は到底許されることではありません。

でも妹のことを思うと、すごくリアル過程にも思えたし、もし自分が親になって、同じ環境下になった時、自分はどういう行動を取るのだろうか、今まで人生では考えたこともない事を考えさせられました。

そして知能を獲得していたチャーリイが一番欲していたのは【母親の愛】だった、というのも何とも悲しかったです。

普通の人間がゆっくりと獲得していく知能を急速に獲得し、人並みなことをしていく過程で、恋愛や仕事、そしてアルジャーノンという白ネズミの友人との関係性にもすごく惹き込まれました。

うーん、なんかやっぱり凄い小説だったなぁ。笑

日本だったら確実に直木賞って感じですし、これはアメリカ古典になってもおかしくないですよね。まぁあと100年くらいかかると思いますが。

そして訳者である「小尾芙佐(おびふさ)」さんのあとがきも楽しく読ませて頂きました。素晴らしい翻訳でした。

余談ですが、東野圭吾作品に「変身」というのがありますが、東野さんはもしかしたら本作から影響を受けている可能性もありそうですね。

それでは、今日はこの辺で。

最後までお読み頂きまして、ありがとうございました。

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