戒名探偵 卒塔婆くん【あらすじネタバレ感想】仏教系ミステリーの誕生!

あらすじ

「僕に解けない戒名の謎はない」前代未聞の戒名ミステリー!

のほほんと生きる金満寺の次男・春馬は金に汚く横暴な住職代行の兄に寺の無理難題をふっかけられがち。今日も今日とて、古い墓石の身元を探している。手がかりは石に刻まれたたった数文学の戒名だけ!?しかし、春馬には同じ高校に通う『戒名探偵』―外場薫という切り札があった。

なぜか仏教に異様に詳しい彼は、この日も墓石の写真を見ただけですらすらと身元を言い当てるのだ。有力檀家のルーツ探しに、仏教界びっくりドッキリイメージアップ大作戦!謎が謎を呼ぶ、巨大コンテンツメーカー創始者の生前戒名を巡る骨肉の遺産争い…知れば知るほど面白い仏教の世界の謎を、外場=卒塔婆くんが解き明かす!

(KADOKAWAより)

感想・レビュー

仏教世界では、『仏様の世界(あの世)』に逝った故人に、新しい名前をつけるらしいのですが、コレを『戒名(かいみょう)』と呼ぶらしいです。

これに因んで『戒名探偵ミステリー』と。

最近は宗教を識るために簡単な本を読んだりしていますが、まだまだ勉強不足で本作を読むまで「戒名」なんて殆ど知りませんでした。

私がカトリック家系で育ったせいもあるかもしれませんが、仏教系の家系の方はわりかし当然の知識なんでしょうか。

前置きはこの辺で、まずいつもの読後の所感としては、終わってみればまぁまぁ楽しめたかな?という感じでしょうか。

というのも本作は、連作短編3本と最後に中編が1本収録されているですが、短編3本がそこまで面白くなかったです。

中編については後半に書きます。

物語は仏教の家系に生まれた寺の次男坊(高校生)が主人公として動き出します。

都内?郊外?に広い土地を持つ寺のいわゆるお坊ちゃん主人公。

富裕層の子たちが多く通う高校で、母子家庭?らしき富裕層ではない特待生男子の外場に何やらお世話になっているようで。

仏教系の知識や薀蓄などは、「へぇ」となってすごく新鮮に読めて楽しいです。

ですがそもそもミステリーが若干弱いという点と、あと主人公の一人称がお馬鹿なお坊ちゃまな感じで、少し読んでいて辛い。笑

表紙から察するにライトノベルなのかな?と思いましたが、一応戒名ミステリーとあらすじにも書いていますし、ティーンズ、ライトミステリー、若しくはライト文芸向けなんですかね。

著者の高殿円さんも初読みなんですけど、デビューは角川学園小説大賞とのことで、確か記憶が曖昧なんですが、角川学園小説大賞って現在の「スニーカー大賞」のことですよね?

当時はまだライトノベルという分類があまり明確にされていない時代だと思いますから、そこから長く活躍されているようなので、なら確かに、この文体のラフさを現役で出せるのにも少し納得がいきました。

話戻しまして、中編は少し色を変えて、第二次世界大戦をギミックに、歴史の経過と遺産相続、戒名が謎を読む展開になっており、たまに長く感じましたが、最後まで楽しんで読めました。

戒名探偵の外場も、ベタな感じのキャラクターなのですが、中編での立ち位置、そこからの謎解きタイムなど、いい感じだったかなと思えました。

だから終わってみればまぁまぁ楽しめたかな?という感覚なんです。

ちょっとこのシリーズについて何も調べていないので分からないのですが、最後に外場の過去が提示されてから終わる流れだったので、続編とかあるんですかね。

この辺も急に主人公が賢くなる感じがして、正直違和感はありましたが、中国を絡めた感じの謎だけに、とても気になりましたね。

これがタイトルにある「卒塔婆くん」と外場の違いというか、意味合いなんでしょうか。

本作を読んで思ったのは、謎の作り方や発想が仏教系だからそう感じるのかは分かりませんが、上手いと個人的に思いました。

だからこそ、せっかく伏線も張っているのに、やるならもっと自然な感じで(会話が漏れ聞こえたとかではなく)外場の過去を匂わせ、主人公の知能レベルでも詰めていけるような展開にして欲しかったかなとも思います。

まぁそれをやるなら圧倒的に頁数が足りないような気もしますし、出版社側の都合とか色々加味してのことでしょうけど。もったいない。

それでは今日はここまで。ありがとうございました。

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