極大射程(上・下)【あらすじネタバレ感想】伝説のスナイパーは、大統領暗殺未遂容疑として世界の敵となり…

(上巻)あらすじ

ボブはヴェトナム戦争で87人の命を奪った伝説の名スナイパー。

今はライフルだけを友に隠遁生活を送る彼のもとに、ある依頼が舞い込んだ。精密加工を施した新開発の308口径弾を試射してもらいたいというのだ。

弾薬への興味からボブはそれを引受け、1400ヤードという長距離狙撃を成功させた。だが、すべては謎の組織が周到に企て、ボブにある汚名を着せるための陰謀だった…。

(新潮社より)

(上巻)感想・レビュー

このミステリーがすごい!海外《2000年》第一位

原題:『Point of Impact

どうもどうも、WBC期間という事もあり、少しお久しぶりの更新になりました。

いやぁ今年のWBCは熱かった、いやもう本当に熱かったです!日本優勝おめでとう!

去年の壮行試合から見てましたが、本戦はリアタイで張り付きましたし、こんなに国際試合で熱かったのは人生で初めてかもしれません。

もう最後のトラウトと大谷翔平なんて、物語より物語でしたよ。笑。

今後、これ程の試合は見れないんじゃないかと思う程、目下WBCロス中です。

ちょうど私が野球少年だった子供の頃は、2006、2009のWBCで、一緒に野球していた友達と観戦していたのを少し思い出しました。

色々と語りたいことはありますが、野球感想ブログではないので、いつも通りやっていきたいと思います。笑

さて、まずいつもの所感としては、中盤までは割と退屈なんですけど、その境を超えた途端、急激に面白くなっていき、正直なところ驚きました。

スティーブン・ハンターの代表作なので、タイトルは聞いたことがあったのですが、ようやく読めました。

まだ上巻が終わっただけなのですが、もう既に下巻が楽しみで仕方ありません。

この先絶対面白くなるような魅力的な展開の連続で、更に最後は主人公が死んだ?かのようなシーンで終わっていきました。

まさにハードボイルドな本作ですが、まず、ざっくりと振り返っていきます。

主人公の「ボブ・リー・スワガー」はかつてベトナム戦争で、大活躍した米国の英雄的スナイパー。

現在は退役しておりその後、酒浸り、妻に手を上げたりなど、戦争の後遺症はあったらしいのですが、それらを克服し、愛犬のマイクと山で静かに、孤独に過ごしていました。

ボブは戦時下では多くの人を撃ち殺しましたが、一度も外した事がない天才的なスナイパーです。戦後は誰一人殺していません。

序盤に密猟シーンもあるのですが、殺しませんでしたし、別の意味で動物を守る役目を果たしていました。

そんな退役軍人の元に、とある依頼が来ます。

要約すると「ボブの狙撃能力を私達に貸して欲しい」というような謎の企業からの依頼でした。

序盤は疑心暗鬼なボブでしたが、徐々にその提案を受け入れることに。途中でこれは罠だと気づき初めますが、目の前にあるライフルが彼の心を徐々に徐々に戦いへと囁きかけてきます。

そのはじめのミッションが「大統領を狙うスナイパーから大統領守る」というもので、ボブのスナイパーとしての経験や知識が求められました。

読んでいる時は退屈でそこまで意識していませんでしたが、今思えば、こういう所でもボブの心は、戦争へと導かれていたのでしょう。

ミッション当日、ボブは嵌められました。

スナイパーを張り込んでいたボブは、背後から仲間に撃たれ、そこから壮絶な逃亡劇が始まります。

そのままスナイパーは、大統領を襲撃。弾丸は大統領から逸れましたが、近くにいた大司教の頭を吹き飛ばしました。

もうここからめっちゃくちゃ面白かったです!

もう一つの視点であるFBI捜査官のニックとも対峙し、ボブに致命傷を負わせます。

本当にいつ死んでもおかしくないくらいの瀕死状態のボブなのですが、驚異的な生命力で何とか逃走し、生き延びます。

さらにインディアン、中部辺り?ですかね、18時間というとんでもない時間を川で流され瀕死状態のボブが、豚を撃ち殺し、肝臓を貪るシーンは心を打たれるような、美しさすら感じるようなシーンでした。

とにかくボブは大統領を狙った、アメリカ中の【敵】となったのです。

なぜ世界の敵になってしまったのか?動機や彼の過去などを含めて、私が退屈だと感じていた序盤の部分にしっかりと撒かれており、完全に嵌められた罠、という状態になっているのが見事でした。

その後、ベトナム戦争で死んだ友の妻に助けられ、愛し合うくだりなどもあり、ボブは快復していき、完全に戦争時代のボブに戻っていました。

その後のボブの反撃が始めるのですが、愛犬マイクの埋葬の為に動く展開がハードボイルド過ぎて熱い!

本作は割と序盤から最後まで複数の視点で物語が動くのと、区切りなく急に視点変更したりするので、結構読み辛さはありましたが、最後は面白さが勝っていました。

もう一つの視点でもある元スナイパーのFBI捜査官ニックも、最後の最後で、ボブの無実を確信し、物語は終わっていきました。

このニックもある意味主人公で、本作はダブル主人公なんですかね?

結構省きましたが、だいたいこんな感じですかね。

私はアメリカ人ではないので、FBIとCIAの関係性なども詳しく知りませんし、ライフルにも当然詳しくありませんが、豊富な知識や描写はかなりのものなのではないでしょうか。

ストーリー性としては、全体的にオーソドックスな感じですが、何より、この複数視点で描かれる物語が、後半に連れて威力を発揮してくるので、その辺りの構成力も上手いなと思いました。

謎の組織が何故、ボブに汚名を着せようとするのか?そもそもボブは最後死んでしまったのか?

ニックの担当していた未解決事件は何の繋がりがあるのか?などなど、下巻も気になる所です。

まだ前半なので、本作の評価は出来ませんが、これはかなり期待できそうです。

さっそく読んで参りたいと思います。

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(下巻)あらすじ

自分のミスでボブを逃がしたFBI捜査官のニックは、真犯人は別にいると考え、独力で捜査を続けた。

やがて真実を嗅ぎつけたニックの前に“アメリカで最も危険な男”ボブが姿を現わす。ふたりは各々の名誉と愛する人を守るため、特殊部隊の兵士120名を相手に壮絶な銃撃戦に乗り出した…。

『ダーティホワイトボーイズ』『ブラックライト』のボブが、死闘を繰り広げるアクション大作。

(新潮社より)

(下巻)感想・レビュー

続いて下巻です。

上巻で、ボブは教会で火の海に包まれ、物語は一旦終わりましたがどうなるのやら…という感じで、いつもの所感から。

まず端的に面白かったですね。

アクション系の海外映画を見ているような展開で物語が動いていくのですが、もう本当に捲る頁が止まりせんでした。

ではさっそく展開を簡単に振り返っていきます。

まず前回、ボブは教会で火の海に包まれ、生死が不明のまま終わりました。

そんな中で物語も、もう一人の視点、主人公でもあるニックから始まります。

FBIの捜査の結果、教会から見つかった死体はボブのものだと判定され、世間でも凶悪犯のボブは死んだことになりました。

ニックはFBIを首になり、失望感のまま日々を過ごしますが、一つだけ引っ掛かることがありました。

そうです、自分宛に向けた謎のダイイング・メッセージを残した事件のことです。

その謎を解き明かそうとニックは動き始め、ついに謎の組織・ラムダインとFBIの繋がり、エルサルバドルでの残虐な過去に辿り着きました。

そして、ボブは死んでいませんでした。笑

再び、ニックとボブは手を組み、反撃開始が始まります。更に敵側のドブラー博士もラムダインの暗い事実を知り、ボブたちと手を組むという展開に。

やがて敵側のシュレック大佐とペインたちも、ボブが生きており、自分たちの過去が知られていることに気づき、特殊部隊兵士120人という戦力を整えます

さらにボブを救ったジュリーは、シュレックたちの手により人質に取られたりもします。

その引き換えに、彼らの過去が証明される証拠品を要求しました。

細かいところの詳細は省きますが、ここまで持っていくまでの群像劇的なスピードで視点変更があり、すごく面白かったです。

ついに全面対決、となりますが、ボブがチート級に強すぎて、無双します。この銃撃戦はカッコ良すぎですよね。

こういう展開は何度読んでも良いものですが、それもこの展開に持っていくまでの緊張感の高め方が上手かったというのも非常に大きなポイントでした。

ボブは悪を倒し、これにて一件落着かなと思ったのですが、ニック共々、幸せになれるはずの切符である証拠を粉々にしてしまいました。

この行動には色々な解釈があると思うのですが、私個人的には、ボブは個人よりも、アメリカという国の未来を救ったのではないのかな?と思えました。

この絶対的証拠品が世に放たれれば、間違いなくアメリカの権威に関わりますし、FBIの衰退にも、治安悪化にも繋がりかねません。

こういった自体を避けるべく、ボブはこのような英雄的行動をとったのではないでしょうか。

まさに元海兵隊で、アメリカに命を捧げた男、本物の英雄といったところでしょうか。

まぁこの行動には賛否が分かれるとは思いますが…見方を変えれば間違いなく、エルサルバドルでのジェノサイドは許されるべきことではありませんし、戒めとしても公開されるべき事実ではありますよね。

さて話を戻しまして、その後、ボブは大統領暗殺未遂として起訴され、ニックはニックで、詐称行為と恋人を人質に、エルサルバドルでの過去を伏せ、ボブを見殺しにするよう持ちかけられます。

この様な流れで、裁判まで始まりました。正直この展開には驚きましたが、物語を単調では終わらせない工夫を感じられ、良いなぁと思えました。

最後の最後で、大逆転裁判でボブの汚名が晴れ、アメリカ的なエンディングを迎え物語は終わっていきました。

ざっと振り返りましたが、こんな感じですかね。

まとめ

思えば王道的な話ではありましたが、様々な工夫により、最後まで楽しめる物語になっていたかなと思います。

ライフル愛といいますか、その豊富な知識も好きな人にはたまらないのではないでしょうか。

解説によると、銃社会を肯定しすぎではないか?との声もあるらしいですが、そこはまぁね、エンタメとして楽しむ心持ちが必要だとは思いますが、実際色々な事件もあるので、何とも言えませんが。

今回古い作品ですが、はじめてスティーブン・ハンターを読みました。人気があるだけにはやはり、それなりの理由があるのだなと、改めて思いましたね。

それでは今日はこの辺で、お読み頂きありがとうございました。

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