(上巻)あらすじ
戦争の気配迫る昭和初期の大阪を舞台にした四姉妹の物語。谷崎の代表作!
旧家・蒔岡家の四人姉妹、鶴子・幸子・雪子・妙子。上流社会に暮らす一家の日々が描かれる。
上巻では、奔放な四女・妙子の新聞沙汰、美しいが無口で未婚の三女・雪子の縁談を巡って物語が展開してゆく――。
(KADOKAWAより)
(上巻)感想・レビュー
谷崎潤一郎は初読みになります。
谷崎は色々と名作、代表作があるのでどれを読むか迷いましたが、「細雪」を選びました。
この決断がすごく当たりで、本当にまだ上巻ですが、面白かったです。
何より文体がとても読みやすいです。
大阪の三姉妹を中心に、美しい家族模様が描かれていて、読んでいてとても心が和みました。
「お春どん癪やわ。グウグウ鼾かいて寝てるねん。嫌い!大嫌い!悦子お春どん殺してやるわ!」
悦ちゃんがまたとても可愛いんですけど、雪子との姉妹関係が読んでいてとても心が温まります。
舞台は大阪というより、大正時代の芦屋と兵庫が中心なので、個人的に私の生まれ故郷でもあるので、懐かしい街の名が出てきて、つい帰りたくなりました。笑
色々と何やら物語が進んだり戻ったりしているので、是非とも続きを読んでいきたいですね。
(中巻)あらすじ
戦争の気配迫る昭和初期の大阪を舞台にした四姉妹の物語。谷崎の代表作!
奔放な四女・妙子は神戸の大洪水に遭うも一命をとりとめた。
しかしその後さらなる悲劇が妙子を襲う。
三女・雪子は、縁談を期待して東京の本家に移り住むことになるが、都会の空気になじめず――。
(KADOKAWAより)
(中巻)感想・レビュー
中巻も読了。
相変わらず面白かったなあ、というのが素直な感想です。
良い読書ができました。
中巻は様々な事件が頻発していくなかで、三姉妹たちのより深い部分が見えてきます。
登場してくる人間の見せ方が絶妙ですし、全ての登場人物たちの個性、バランス感覚などがとても良いんですよね。
本当に現代の私が読んでも、楽しめるので、時代背景は大正ですが、古く感じないといいますか。
それ程までに普遍的なものを描いているのかもしれません。
三姉妹の美しさや弱さ、品性であったりを大切に表現しています。
それに反発する妙子の姿こそ、現代女性の姿を表しています。
あとは女中のお春どんがやっぱり面白い。
文量はありますが、流れるように読みやすいです。
残りの下巻が楽しみです。
(下巻)あらすじ
戦争の気配迫る昭和初期の大阪を舞台にした四姉妹の物語。谷崎の代表作!
日中戦争開戦の向きがいよいよ本格的になる中、三女・雪子の縁談に光が見える。
一方、家から絶縁を言い渡された妙子は――。
著者・谷崎が第二次大戦下、自費出版してまで世に残したかった、大作の完結編。
(KADOKAWAより)
(下巻)感想・レビュー
いよいよ最終巻です。
楽しい読書の時間も終わってしまいました。
まず読後感としては、大変良かったです。
まだこれからも三姉妹や周囲の者達の生活は変化しながらも続いてゆき、やがて戦争に至るのでしょうが、それでも読んでみたいと思ってしまいました。
没落していく上流階級の過程を通して様々な感情を与え、終始淡々と物語を綴っていきながら、これだけの長編をずっと面白いまま最後まで持っていくのは、素晴らしい技量なんでしょうね。
最後は皆が幸せだったかは分からないが、それなりに生きていくのだろうと、分かって一安心しました。
欲を言うと悦ちゃんとお春どんの未来が見てみたいです。不可能ですが、、笑
谷崎はこの作品を戦争中に書き続けて、発禁処分されたみたいな話は聞いたことがありました。
ですが本作は自費出版だったとは、驚きましたね。それ程までにこの作品を世に残しておきたかったということでしょうか。
没落していく美しさというのは、太宰の斜陽なども好きですが、細雪も同じくらい好きになりました。
是非とも歳を重ねたら、また読みたい作品ですね。
あとは谷崎の他の作品も読んでいきます。
それではまた。