蒲団【感想】(青空文庫・田山 花袋)

感想・レビュー

虚しい、けど主人公が最後まで変態過ぎてまた面白い。

師弟関係のお話。細君、子持ちのおじさんが若く美しい文学志望の女に恋をした。だが安易に手が出せず溜まってゆく肉欲と支配欲に煩悶する日々。

現代なら不倫一歩手前と言った言葉で片付けられるが時は明治。この辺りの世界観はやはりどの作品も新鮮に見えるし、とても興味深い。

そこに女は男を見つけ、神聖なる恋を唄うが、やはり男女の肉の結びつきはいつの時代も普遍的であって……。

色々あって女は国に帰るが、最後主人公が女の使っていた蒲団に縋りつきながら泣く所は正直めっちゃ笑った。何より細君が一番可愛そうで、そこだけ心が痛い。

またそれに主人公が懊悩し細君に当たり散らし酒浸りになるも、皆の前では強がり、弱さを隠そうする姿が何とも滑稽に私は見えた。

だが太宰の作品にもこういった主人公が多いのでやはり「蒲団」は私小説の原点的作品でもあると言えるのかしら。

倒錯的な内面描写はやはり時代の篩にかけられても残るだけあってかなり秀逸です。