
あらすじ
犯行時刻の記憶を失った死刑囚。
その冤罪を晴らすべく、刑務官・南郷は、前科を背負った青年・三上と共に調査を始める。
だが手掛かりは、死刑囚の脳裏に甦った「階段」の記憶のみ。
処刑までに残された時間はわずかしかない。2人は、無実の男の命を救うことができるのか。
江戸川乱歩賞史上に燦然と輝く傑作長編。
(講談社より)
感想レビュー
第47回(2001年)江戸川乱歩賞受賞、このミステリーがすごい!《2002年》第8位ノミネート
高野和明さんの作品は「ジェノサイド」以来ということで、私は個人的にこの作品がとても好きで(生涯読んだ小説ベスト5に入るレベル)、いつか著者さんのデビュー作や他作なども読めたらと思っていました。
そして年明けてすぐにこの本と出会たので、さっそく読んでみました。
まず読了後の所感としては、もう純粋に面白すぎましたね。いやぁ面白い!
やっぱりこの作家さんって、デビューした時から凄い方だったんだなぁと大変感心しました。
途中から乱歩賞とかそんなことも忘れて夢中で頁を捲っていたと思います。
全体の完成度、トリック、構成の波、文章の読みやすさなど、当然ですが新人というか、とてもアマチュアが書いたレベルではないんですよね。
終盤では後の作品に繋がりそうな、兆しというのも感じ取れましたし、やっぱりこの方は普通の人と見てる世界というか視点やそもそもの知識欲が違うように思います。
それでいて、作品内では終始冷静ですから、とてつもない頭脳の持ち主だ。
見方によっては、このレベルじゃないと江戸川乱歩賞は受賞できないぞ、という意味にも感じますが、おそらくこの作品はその中でもずば抜けているのではないでしょうか。
さて簡単にこの物語は、元刑務官と傷害致死罪で前科をもった青年という異色のコンビが、死刑判決を受けた死刑囚の冤罪を晴らすために、動き出していき……という感じ。
この中で死刑制度や法に対する考えかた、そもそもの人間の内に眠る性といったものを描かれていきます。
余談ですが、最近で言うならば、死刑判決から長い時を得て無罪判決となった袴田事件とかもありましたよね。
話戻しましたて、作品内でのユーモアのセンス、それを伏線として回収する手段、どれもが一級品です。
そしてミステリーとして謎解き、エンタメとしての起伏もしっかり最後まで計算され尽くしていて、何も言うことないんですよね。
強いていうならば、最後の寺が土砂で埋まっていたその内部が分かりづらいのと、直近に偽装された証拠があるのなら、もっとそのような痕跡があってもおかしくはないかなとは思いました。
何よりそれでも全然目をつむれる範囲内なのと、純粋に私の理解力不足かもしれません。笑
多少、時代背景的に色々と古いと感じる部分もありますが、これは仕方ありません。
著者さんは元々、映画や映像の出身とのことなので、そういった経験も存分に活かされた作品だったのではないでしょうか。
今年は高野さんの別作品も積極的に読んでみようと思います。
巻末には宮部みゆきさんの乱歩賞選考のお話などがあって、とても面白いです。
それでは今日はここまで。
最後までお読みいただきありがとうございました。
今年は新年早々、良い作品に出会えて、とても嬉しいなぁ
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