白夜行【あらすじネタバレ感想】何なんだ、この作家は、一体、何なんだ!?

あらすじ

1973年、大阪の廃墟ビルで一人の質屋が殺された。容疑者は次々に浮かぶが、結局、事件は迷宮入りする。被害者の息子・桐原亮司と、「容疑者」の娘・西本雪穂―暗い眼をした少年と、並外れて美しい少女は、その後、全く別々の道を歩んで行く。二人の周囲に見え隠れする、幾つもの恐るべき犯罪。だが、何も「証拠」はない。そして十九年…。息詰まる精緻な構成と、叙事詩的スケール。心を失った人間の悲劇を描く、傑作ミステリー長篇。

(集英社より)

感想・レビュー

このミステリーがすごい!《2000年》第二位ノミネート

はぁ、またもや傑作、傑作としか言いようのない、大傑作でした。

まさにトリックスター。笑)ですけど、それだけじゃここまで言わない。

読んでから、ため息をつき、本を閉じてから、またため息をつく。

目を瞑り、もう一度、あらゆるシーンを脳内で再生させて、暫くしてから目を開く。

出てくる言葉は「何なんだ、この作家は、一体、何なんだ!?」と。

過去に何度も東野圭吾作品を読んだあとに呟いであろう言葉が出てくる。そしてまた呆然とする。

といった感じですかね。笑

うーん、素晴らしいというか、シンプルに凄すぎるんですよね。

複雑な構成、巧緻なトリックもそうですけど、それは最早いつものことで、今回は東野圭吾作品の中でも一番「暗黒」な物語。

しかもその主役級男女の二人を内面描写も一切無しで文庫本854頁も描き、それとない恐怖と哀しみを他社視点という背景だけで、悟らせるなんて狂気の沙汰じゃないし、そんな長編小説、ミステリを私は人生で読んだことがなかったです。(もしかしたら短編はあったかもしれませんが)

でやっぱり凄いのがそれでも読みやすいんですよね、東野さんの文章って。

私の中で東野圭吾作品に惹かれた理由って色々あるんですけど、今思えば一番は文章なんですよね。

筆力ともいいますか、句読点を打つ位置なんかも、私が文章、行間を読むときの呼吸にすごく合うんですよね。

今回は申し訳ないですが、ちょっとお話が長く、いつものように説明っぽいことを書きだすとあまりにも複雑で長くなるので、やめときます。

それに自分にはこの物語を上手く要約する自信もありません。

読んで体感してください、としか言いようがないです。

自分がせいぜい書ける感想は、そういえば「友彦」はあれからどうなったんだろうか、元気にやってるのだろうかとか、桐原亮司と唐沢雪穂の内面ってどんな感じだったのかなぁ、二人は暗い夜の中で、何を共有してあぁなってしまったのだろうかとか、そもそも小学生にあそこまでの犯罪、知能は可能なのか?とか、雪穂は人生において最終的に何を求めて生きていたのだろうか、とか。

そもそも二人は何故くっつかずに、表向きは別々で、あの生き方を選択したのか。

亮司はある意味、父親の雪穂陵辱と売買を贖罪のつもりで雪穂の右手となったのか、いやそんな次元ではないのかもしれない。もっと人に対して、社会に対して、世界に対してという怨念か。

雪穂は雪穂で、自分に害ある者やそれに関する者は、全て復讐か排除という選択をしてきた。

それは彼女の残酷な過去がそうさせたのは間違いないが、その非の打ち所がない美貌と頭脳、立ち振る舞いは、あまりにも利己的に使用され、暗黒で、ただのサイコパスで済ませていいのか?とかね。

もうね、ぶつぶつと拗ねた子供のように思うだけですよ。笑

本来、内面描写が少ない、もしくは本作みたいにそもそも描写が無い長編小説って、こうした疑問が残ってモヤモヤするはずなんですけど、この余韻が楽しくもあるんですよね。不思議なもんだなぁ。

もっというと東野先生に是非とも聞いてみたくもなりますが、それは不可能なので、解説の馳星周さんが書いてたエッセイ本をいつか読んでみようと思います。

恐ろしいまでの神憑り的な筆力と冷徹な目。

あの馳さんが「嫉妬した、トリックスター呼び(連発)、彼は陰で薄笑いを浮かべている、悔しい」という解説も中々に面白く、ニヤニヤしながら読ませて頂きました。

今回はこのへんで終わりたいと思います。お疲れ様でした。

あぁ、書き忘れてましたが、1973年頃の大阪や、バブルが弾けた東京、実際に起きた事件や当時の流行アイテムなども組み込まれており、雰囲気も楽しめました。

あと大阪の地名も懐かしい場所がいっぱいでした。

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