デミアン【あらすじネタバレ感想】ノーベル文学賞のヘッセが描く二つの内面世界

あらすじ

ラテン語学校に通う10歳の私、シンクレールは、不良少年ににらまれまいとして言った心にもない嘘によって、不幸な事件を招いてしまう。私をその苦境から救ってくれた友人のデミアンは、明るく正しい父母の世界とは別の、私自身が漠然と憧れていた第二の暗い世界をより印象づけた。主人公シンクレールが、明暗二つの世界を揺れ動きながら、真の自己を求めていく過程を描く。

(新潮社より)

感想・レビュー

ノーベル文学賞受賞者のヘルマン・ヘッセ。

ドイツの詩人であり「詩人になるか、でなければ何にもなりたくない」と脱走、職を転々した後、書店員となり、その後作家としての道を歩んでいく……

そんな些細な経歴だけでも興味深いヘッセは初じめて読みます。

まず冒頭から主人公・シンクレールの幼少期を掘り下げていくのですが、気づきとでもいうのか、

失望ともいうのか、新たな性への発見や、家族や世の中の平和な部分だったものとは真逆の暗闇の部分を丁寧に拾っていきます。

そんな暗闇の中でシンクレールが出会う一人の少年が「デミアン」です。

彼は同級生の中でも、特異な存在で、暗闇の中のシンクレールを助けたデミアンは、大人びた存在に見えて一種の憧れを獲得する。

その後、シンクレールは不良まがいに落ちぶれるが、また青年期にデミアンと再会し、精神世界の外側と内側を確認し、他者との競争から降りるという感じで…

個人的に「しるしのある人間」とか、デミアン母の愛は、ヘッセ自身が生きているうちに強い影響を与えていた存在なのではと勝手に思いました。

まぁだから何だという話なのですが。

全体的に哲学と精神分析からくる自我を見つめ続ける、というのは日本の純文学にもかなり影響を与えていたのかもしれません。

解説にも書いていたのですが、ヘッセはこの頃、精神分析や読唇術などにも興味を示していらしいです。

この作品は、最後の戦争否定的な作風のため、ヘッセは当初匿名で投稿していたとか。

のちにヘルマン・ヘッセが書いたらしいとなり、著者にヘルマン・ヘッセの名で再出版したらしいです。

いつかまた『車輪の下』も読んでみたいと思います。

それではまた。

紹介した本

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