ザ・ロイヤルファミリー【あらすじネタバレ感想】最後に求めたのは、馬主としての栄光

あらすじ

史上初!山本周五郎賞&JRA賞馬事文化賞W受賞作! 

継承される血と野望。届かなかった夢のため――子は、親をこえられるのか?

成り上がった男が最後に求めたのは、馬主としての栄光。だが絶対王者が、望みを打ち砕く。誰もが言った。もう無理だ、と。しかし、夢は血とともに子へ継承される。馬主として、あの親の子として。誇りを力に変えるため。諦めることは、もう忘れた――。圧倒的なリアリティと驚異のリーダビリティ。誰もが待ち望んだエンタメ巨編、誕生。

(新潮社より)

感想・レビュー

第33回山本周五郎賞、JRA賞馬事文化賞受賞作品

早見和真さんは初読みです。

「イノセント・デイズ」「店長がバカすぎて」など、読みたい作品が他にもあった作家さんなのですが、競馬の小説ということで先にこちらの本を買いました。

まず読後感としては間違いなく面白かった、ですね。

本作は馬主を主軸においたお話で、一部と二部に別れている構成で作られていました。

私は競馬も大好きなので業界用語もわかるのですが、一応補足しておきます。

【馬主(うまぬし、ばぬし)】とは、レースを走る競走馬を買った人のことをさします。

馬主には、個人か法人かなど他にも様々な形態がありまして、本作は個人馬主に焦点があたっており、それを陰で支えるマネージャーの男が主人公となります。

本作は一人称で、ですます調の文体です。

さてざっくりと一部、二部で振り返っていきます。

一部

主人公のクリスは、税理士の職についていましたが、同じく税理士の父を亡くし、心に穴があいたような日々を過ごしていました。

そこでたまたま正月の神社で同級生に会い、競馬に誘われる。クリスは競馬場にこそ行かなかったものの、テレビで競馬を観戦することに。

直感で良いなと思った馬が二頭いて、それを同級生に電話で伝えると、まさかの的中。事情は省きますが、その馬券が3万円から428万円に大化けしました。笑

その経緯で出会った派遣会社の社長である山王耕造の会社に就職。後に時間をかけてクリスは山王耕造の社長秘書になります。

ここから二人の社長と秘書の関係でありながらもどこか父と子のような馬主物語が幕をあけます。

山王耕造は、破天荒な性格で、競馬中毒者といっても過言ではなく、同じ関係者からもあまり良い印象は持たれてはいません。そんな

そこで出会う数々の馬たちの中でも一際思い入れの深い馬が出てきます。

それがロイヤルホープという馬でした。このロイヤルホープを主軸に家族、馬、調教師、騎手、牧場関係者など様々な人物が出てきてとても泣けるお話になっていて、私も何度か泣けました。笑

そしてロイヤルホープも一部と共に引退します。

二部

ロイヤルホープが引退し、亡き山王耕造のあとにクリスが支えるのは、山王耕造が愛人と作った息子の大学生の耕一です。

一般的に馬主になるには、年収や資産などの条件があるのですが、一部特例で馬を親族に引き継げる制度があり、耕一は大学生の身でありながら特別馬主になります。

そして耕一に託された馬は父親がロイヤルホープ、母親がロイヤルハピネスで名がロイヤルファミリーという馬でした。

クリスも年を重ね、ようやく結婚したりと周囲の環境も少しずつ移り変わりながら、馬主のマネージャーとしての物語はまだ続いていきます。

山王耕造のライバルだった椎名氏の息子も出てきて、向こうもマネージャーは同じで、馬同様、馬主も時代は、親から子へと継承されます。

その中で、様々な事件や葛藤を乗り越え、様々な重賞レースを乗り越えて、最後の有馬記念。伝説のような熱い勝負を残し物語は幕を下ろしました。

そして本作には仕掛けがありまして、一部にもあったのですが、物語終了後に馬の成績表が掲載されていて、二部のロイヤルファミリーのその後の成績が載っていました。

そのこにはとんでもない成績が残されていて、つい笑ってしまいましたが、そこを見てまた鳥肌が立つというかそういった楽しみ方もありましたね。

大阪杯、天皇賞(春)、凱旋門賞、ジャパンカップ、有馬記念、まさかの全部一着! 

そして負かした相手馬を見てまた笑ってしまいました。強すぎる。笑)

まとめ

ざっくりと感想を書きましたが、何より著者の早見和真さんの競馬愛がひしひしと伝わってきました。

こうした馬主の裏側の物語が読めたことが、何よりも楽しかったです。

取材や勉強もかなりしたのだろうなぁと思えるほど興味深い内容で、かつ専門的にはなりすぎない、そのバランス感覚も良かったのではないかなと思います。

レース描写も臨場感あって面白く、読んでる最中ついつい「その展開あるわぁ〜」と共感してしまうところもあったりと楽しんで読めましたね。

個人的には人間関係なども含めて、やっぱり一部が面白かったかなと。

二部ももちろん面白かったのですけど、やっぱり本作は山王耕造という男がとても人間味があって魅力的に見えましたね。

私個人としては関わりたくない人ですけど。笑

という感じで今日は終わります。

またいつか馳さんの「黄金旅程」も読んでみる予定なので、また買って読んだら感想を書きます。

お疲れ様でした。

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