あらすじ
美少女を殺害し、研ぎあげたハサミを首に突き立てる猟奇殺人犯「ハサミ男」。
3番目の犠牲者を決め、綿密に調べ上げるが、自分の手口を真似て殺された彼女の死体を発見する羽目に陥る。自分以外の人間に、何故彼女を殺す必要があるのか。
「ハサミ男」は調査をはじめる。精緻にして大胆な長編ミステリの傑作!
(講談社BOOK倶楽部より)
感想・レビュー
第13回メフィスト賞受賞作、このミステリーがすごい!《2000》第九位ノミネート
※ネタバレご注意!
タイトルからして特異なのですが内容もかなりのもので、今まで叙述トリックはそれなりに読んできましたが、まだこんなやり方があるのかと思わされました。
多分三層くらいにロジックが展開されていて、それに気づかされるはずの答え合わせにまず混乱するが、理解してくるととても恐ろしい。
つまり読み手はずっと日高光一の語り手だと思っていたのが、実は序盤ですり替わってもう一人の発見者である安永千夏の一人称を読まされていたということになる。
よく考えればこの叙述トリックは他で読んだことがあったような気もするが。
また警察側の視点を挟んで語り手が入れ替わったことを気づかせないミスリードがあるのも秀逸。
これによって見解の相違が最後まで続き、そしてそのまま終わる。ここも尖ってる。
ただこのトリックを成立させる為の違和感は序盤からあって、何故誰も(警察もテレビ局も)ハサミ男を「男」だと決め付けているのかなど。
まずミステリならそこを疑うのが定石というか、潰しておくポイントだと思いますが、それが一向にないのがまさか、、と言う感じで少しだけ先は読まてしまいましたね。
単に自分がミステリ慣れしているだけかとも思いましたが、やはりこの辺は少々おかしい。
だけど、だけどですね!本作は、そういったトリックの為の明らかな違和感を超えてくるような、
真犯人になるのでここが本当に素晴らしいと思いました。
読み終えてみて、面白かったことは間違いないです。
あと少し気になって著者さんを調べてみたのですが、どうやら49歳というまだまだ若いのに亡くなられてしまったらしく、Tweetなどもその日から止まっていて、正確な原因は出版社からも明かされていませんでした。
その3日前に著者さんのお兄さんが脳出血で亡くなられていたり、作中の自殺未遂描写が結構独特だっただけに、とても心配ですね。お悔やみ申し上げます。
では今日はこの辺で終わりたいと思います。
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