
あらすじ
「敵は、先入観だよ」学力も運動もそこそこの小学6年生の僕は、転校生の安斎から、突然ある作戦を持ちかけられる。
カンニングから始まったその計画は、クラスメイトや担任の先生を巻き込んで、予想外の結末を迎える。はたして逆転劇なるか!?
表題作ほか、「スロウではない」「非オプティマス」など、世界をひっくり返す無上の全5編を収録。
最高の読後感を約束する、第33回柴田錬三郎賞受賞作。
(集英社より)
感想・レビュー
第33回柴田錬三郎賞受賞、第十八回(2021年)本屋大賞第4位ノミネート
少しだけお久しぶりの伊坂幸太郎さん。今回は単行本を新刊で買って読みました。
今回は「逆ソクラテス」「スロウではない」「非オプティマス」「アンスポーツマンライク」「逆ワシントン」の5作品が収録された短編集。
まず読んだ所感としては、いつもの伊坂作品ではあるけれど、読んだことのないような味わいがある伊坂作品だった、という感じでしょうか。
本作は、伊坂幸太郎さんのデビュー20周年目の作品らしく、どの短編も小学生が主役の話でした。
なのでいつもとは少し違ったテイストを感じつつ、らしさもありつつ楽しめました。
教師と生徒、いじめ、バイアスなどの思い込みや、正義と悪、スポーツなど様々なアイテムが短編に盛り込まれていました。
毎回伊坂作品の感想は、難しいと書いているのですが、今回もそれは同様でどの短編も満遍なく良く、安定感がありました。
なのであとがきの方に少しだけ触れたいと思います。
まず作中に教師として出てくる『磯憲』は、伊坂さんが小学四年生の頃から三年間担任をしてくれた本当の教師の名前からとっているらしいです。
あとは少年少女たちを主人公におくのは、やはり語彙など色々な弊害があって難しいとのこと。
私は読んでいてどこか少しだけ石田衣良さんの「4TEEN」を思い出すような気持ちになりました。まぁこっちは中学生ですし、全然似てもありませんが。
そして伊坂さんは最後にこうも言っていて少し引用させて頂きます。
どうしたら自分だからこそ書ける、少年たちの小説になるのか。
自分の中にいる夢想家とリアリスト、そのどちらもがっかりしない物語を、ああだこうだと悩みながら考えた結果、この五つの短編ができあがりました。
(逆ソクラテスより)
なるほど、自分の中にいる夢想家とリアリスト、そう言われれば確かになぁ。と思える内容だったと思えました。
最後の家電量販店の店員もおそらくあの犯罪者ですよね。これを描けるのは、確かに夢想家の部分でしょうし、それと反してリアリスト的な部分も描かれていたりもしていました。
今思えば異様に頭が良い小学生とかいましたけど、まそれを含めても伊坂さんの小説って思えるのは不思議なものですね。
またいつか別作品でも読もうと思います。
お疲れ様でした。
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