あらすじ
大陸統一を目指す若き皇帝率いる帝国軍と、過去の英雄達との争い
生体分子機器(ナノマシン)を用いて魔法を再現できた文明が滅びると、人々はそれをマナと呼んで生活に利用し、新たな歴史を歩み始めた。
世界に七体存在する名前を持つ竜の一体を討伐したことで名を馳せた冒険者の一員であるバジル、ドレイク、犬のBDは三人で自由な旅を続けていた。
彼等は旅の途中、赤子を拾う。
見捨てるのは気が引けた三人は赤子の引き取り手を探すことにするが、情が沸いてしまい自分達で育てることにする。
赤子の成長に伴い、粗暴な彼等も変化していった。
そんな中、大陸統一を目指す帝国軍の侵攻が彼等の暮らす村にも近づいていた。kindle発の本格ファンタジー
(Amazonより)
感想・レビュー
皆さんこんにちは、こんばんは。いかがお過ごしでしょうか。
今日はですね、ちょっとだけいつもと違いまして、このブログに個人的な書評の依頼をくださいまして、、(恐れ多い…)
積読本は相変わらず山盛りあるので一瞬迷いましたが、「これも物語の縁だ」と思い、即座に引き受けることにしました。
何より初めて言ってくださった方だったので、そういう所も大きかったかなと。
以前に知り合いの小説の感想を書きましたが、あれはリアルの知り合いなので、ノーカウントということで、笑)
今回ご紹介するのは、Kindleで出版されている一戸雄基さんの小説になります。
基本的に私はプロ・アマ関係なく物語は物語として扱いますので、いつも通りの感想を書いていこうかなと思います。
今日は感想だけではなく、著者さんの簡単なインタビューにも答えていただきましたので、最後にプロフィールと共に掲載しておきます。
それではさっそくいつものように読了後の所感から。
まず最後の頁を読み終えて「いやめっちゃ面白いやん」と素直な言葉が出てきましたね。笑
終盤は熱い展開で一気読みでした。
最後に明かされる帝国側の秘密まで本当に面白かったです。
では、ざっくりと物語を振り返っていこうかなと。
まずこの世界には、七体存在する「名前を持つ竜」というのがいます。
そしてそのうちの一体を討伐したことで世界に名を馳せた冒険者の「バジル、ドレイク、犬のBD」たちの視点がメインで物語が動いていきます。
彼ら冒険者は「八人の友人達(エイトフレンズ)」と呼ばれるようになり、他にもメンバーがいるのですが、今は別々に過ごしている模様。
バジル一行は、旅の途中で赤子を拾います。そこからなんだかんだありながらも「赤子・カエン」を育てる展開に。
孤児院の話や、戦闘狂不器用野郎のバジルたちが、パパになっていくほんわかとした過程があって、序盤はわりとゆったりとしたスタートでした。
赤子や子供を拾う展開ってわりとありがちで、実は王族側やすごい子だった……みたいな感じで、
子供を軸に物語を動かして行くのですが、本作は孤児院を作り普通に育てていく感じはとても新鮮でしたね。
とはいっても、まだカエンの出生には何か秘密がありそうな気もしますが、後の展開的にどうなんだろうか。
そして彼らの平和な日々はどんどん流れていき、気づけばカエンも16〜17歳?くらいになっており、BD(犬)も家族ができたり変化していきます。
度々、帝国側などの視点が入るのですが、まだこの時は読者として正直よく分かっていないような所も多かったかなと。
何かが動き出しているんだなぁ程度で、国とか地名がまだ理解出来ていないので。
後に整理できて徐々に分かってくるのと、こういう作品は、シリーズとして読み進めるうちに自然に覚えていくのが理想なので、読み方としては無理に覚える必要もないかなと。
そうしてやっと物語が動きだします。
バジルとドレイクたちの平和な日々は、突如として崩壊します。
バジルとドレイクがいない間に、帝国側の領土展開により、孤児院のメンバーは全員皆殺しにされました。以外だったのは、BD(強い犬)もやられてしまい、全滅してしまったのです。
少しだけその時の状況が書かれていましたが、今後もっと詳細に明かされるのでしょうか。
とにもかくにも、ドレイクは自我を喪失してしまい、怒り狂ったバジルは、帝国側に単騎で乗り込み2500人を殺し、命を落としました。
恐らく全盛期は過ぎているかもしれないのですが、「八人の友人達」がめっちゃくちゃ強いってことが証明されます。
確かにカエンが育っていたので当たり前ですが、バジルやドレイクたちも同様に歳を重ねていたので、おじいちゃんではあるのですよね。
表紙にある「活躍するヤツ、ほとんどジジババ」の謳い文句が徐々に見えてきました。笑
話戻しまして、ここから帝国側の模様がより描かれていき、なぜカエン達(八人の友人達の支配下なのに)が襲われてしまったのか、真相が見えてきます。
次いでバジルが晒し首にされます。
そこで「ドレイク、BD、バジル」たちが救った、かつての孤児院の少年「マット、フランシス」たちが、バジルの首を奪還したシーンは、王道ですが、とても熱かった。
個人的にこのマットとフランシスが気になっていたので「早く出てきてくれ」と思いつつも、最高のタイミングで出てきてくれたのが嬉しかったですね。
終盤で若き皇帝・イノスの人間味も出てきて、帝国側の竜の秘密も垣間見え、面白い。
そしてバジルが晒し首にされている報を聞き、かつての仲間たち「八人の友人達(ジジババ)」が動きだす流れがあって、物語は幕を閉じます。
最後にカエンたちの切ない幻想も描かれ、物語のフォローも完璧でしたし、シリーズとしてすごく良い序章が描かれていたのではないでしょうか。
戦記もの的な一面もあるので、後半の群像劇的疾走感は、映像化しても面白そうだなぁ……と思いました。
まとめ
はい、という感じでいかがでしたでしょうか。
この展開がじわじわと動き始める感じや、最後の英雄たちの反逆の狼煙が上がる感じなんか、好きな人にはたまらないのではないかなと。笑
細かい生活周りや軍事的な資産問題、国家の特徴もしっかりと描かれていますし、ギルドと帝国側の吸収とかも本当によく考えられているなと。
地図を見てみると、雑な王国だけ…というファンタジーなどではなく、共和国や王朝、連邦、商業自由都市なんてものがあったり、本当に歴史が好きな人はここでもワクワクするんですよね。
個人的には「AC歴」という暦も気になりますし、そもそもあらすじにある「生体分子機器(ナノマシン)を用いて魔法を再現できた文明が滅びると…」という歴史背景もすごく魅力的で気になりますよね。
あとはタイトルにもある「アーカー大陸:禊」なんですけど、「禊」という部分にも今後注目ですよね。
この作品のレベルが高いので言及しますが、あとは各国の宗教が描かれていくと、より一層、世界観というか歴史が立体的に見えてくるのかなと思いました。
しかし、今後描かれるかもしれないので、ここらで大人しくしておきます。笑
失礼ですが、ここまでしっかりとした物語や世界観など想定せず読み始めたので、正直驚きました。
プロ・アマ関係なくと冒頭に書きましたが、文章力や創造性を鑑みても、お世辞抜きにプロでもおかしくないような気もしましたけどね。
何やら著者さんは、これが処女作になるとのことで、すごいですよね。新人賞とかプロには興味がなかったんですかね。
まぁただ小説の新人賞って、一冊で完結していないといけない賞が多いですし(例外な賞もありますが)、そもそも本作は既に個人出版されているので、ネットや口コミで広がっていくのがベストなのかもしれません。
もし今後プロとして大衆に向けるなら、主役(八人の友人達)の見せ方を工夫する必要がありますが、プロの編集がつけばなんとでもなるんじゃないかなぁと。(著者がそれを良しとするかは別として)
今のところ主役たちが少年少女達ではないので、ファンタジーや戦記ものとして売り方を考える必要があると思いますが、少なくともファンタジーや戦記ものなどが好きな人は楽しめるかなと思います。
一つ強いていうならば、序盤から中盤までの展開にもう一つ何か刺激があれば、見慣れない単語や国名地名などの没入感阻害を防げるのかもしれません。
個人的にはカエンとバジルたちの感情移入がもう少し欲しかったかなと。小説というフォーマット的に勿体ないなとは思いますが、
でも最後まで読むと十分に面白いし、どうしても視点がよく動いてしまう群像劇などは、淡々と事象を描いてしまいがちなので、仕様上仕方ない気もします。
生意気なことばっかり書いて申し訳ないのですが、何より書いてる著者さんが一番楽しそうなので、自分の面白さを信じて最後まで書いて欲しいですね。笑)
今回はこのようなご縁もあって、著者さんに簡単なインタビュー風のような質問にも答えていただきました。ありがとうございます。
最後にプロフィールとインタビューを掲載しておきます。
それでは今日はここまで。
最後までお読みいただきありがとうございました。
著者インタビュー
- 本作を書こうと思ったきっかけや理由を教えてください
たぶん頭の中に自分だけの理想の物語を持ってる人っていると思うんですけど、私もそういう一人でして生きてる間にそれを形として残しておきたいなと思ったのがきっかけです。この物語を形として残して、大きくなった息子に渡せたらいいなと。
- 本作の構想には、どれくらい時間をかけられていますか?
構想というわけではないですが、かれこれ20年以上前から風呂で頭を洗っている最中や、眠りにつく前の目を瞑っている時など、ずっとこの物語のあるシーンを想像していました。そのシーンに辿り着くための前振りとしての本作の構想は1~2カ月ほどかけて制作しております。
- 本作の好きな登場人物(キャラクター)は誰ですか?
私個人のイチオシとしてはアンギルダンお爺ちゃんです。
- 今後、続編は出版されますか?
出来れば出したいです。
- 物語のエンディングは決まっていたりしますか?
エンディングは決まっていません。エンディングに至るまでの過程で私の書きたいシーンは書けると思うのですが、その結果のエンディングまでは想像できてないです。
- 本作を執筆するにあたって、大変だったことがあれば教えてください
書き始めが本当に大変でした。小説を書くということ自体が初めてだったので、どこから手をつけてよいのやらさっぱりわからずでした。そこで、世界観構築に他の方の協力を仰いだりしてなんとかかんとか進めていきました。段々それっぽい文章になってきてからは楽しくなってどんどん進んでいきました。良い文章かどうかは置いておくとして(笑)
- 最後に読者に一言
この物語は出来るだけ誰かを格好よく見せようとか、格好いいセリフを言わせようとはしないように意識して書いています。淡々と、起った出来事を報告するように書いています。元が自分の頭の中の妄想ベースなので、無理矢理淡々と描くくらいが丁度いいだろうと思った次第です。それでも読んで頂けた方の心に響くものがあれば、そんなに嬉しいことはありません。是非感想を頂けると幸いです。
ご協力ありがとうございました!(管理人)
著者プロフィール
ペンネーム/一戸雄基(いちのへゆうき)
1985年青森県むつ市で生まれ、1歳前後に川崎病を発症。
17歳で信号無視の車に跳ねられ左足大腿を切断、以降義足を使用する。
中卒の障害者はまともな職にはつけないだろうと、自身で輸入古着屋を開業するが、お金を貸した知人に逃げられ借金が残る。
借金返済のためサラリーマンとなり、ブラック企業で精神的肉体的に鍛えられたあとホワイト企業へ転職。以降人事労務マンとして数回の転職を経てそれなりの役職と給料を得たころ借金完済。再度起業する。
現在身体障害者専門の人材紹介会社を経営し人事労務コンサルも行う傍らビジネスに何ら関係ない物語を執筆中。
執筆にあたり影響を受けている作品・作家様
火怨 北の燿星アテルイ 陸奥三部作 高橋 克彦
老人と宇宙 ジョン・スコルジー
伝説の艦隊 ニック・ウェブ
われらはレギオン デニス・E・テイラー
プロジェクト・ヘイル・メアリー アンディ・ウィアー
漫画うしおととら 藤田和日郎