赤ずきん、旅の途中で死体と出会う。【あらすじネタバレ感想】童話と本格ミステリの融合は、奇跡的な出会いを果たした

あらすじ

日本の昔話をミステリで読み解き好評を博した『むかしむかしあるところに、死体がありました。』に続き、西洋童話をベースにした連作短編ミステリが誕生しました。今作の主人公は赤ずきん! ――クッキーとワインを持って旅に出た赤ずきんがその途中で事件に遭遇。「シンデレラ」「ヘンゼルとグレーテル」「眠り姫」「マッチ売りの少女」を下敷きに、小道具を使ったトリック満載! こんなミステリがあったのか、と興奮すること間違いなし。全編を通して『大きな謎』も隠されていて、わくわく・ドキドキが止まりません!

(双葉社より)

感想・レビュー

第十七回(2020年)の本屋大賞10位にノミネートされた「むかしむかしあるところに、死体がありました。」の続編ではないが、童話を扱うミステリという同シリーズ。

私は前作をまだ読めていないのですが、先にこちらを読むことになりました。

何を言っても表紙、そしてタイトル。これだけでもかなり面白いし、まず着想が勝ってるなぁと思えましたね。

内容はもしも童話の世界線がこっちにいっていたら、というif要素+案外本格路線なのです。

物語は連作短編集なので、各話軽く感想を書いて参りたいと思います。

第一章「ガラスの靴の共犯者」

まず主人公が赤ずきんです。赤ずきんはシュペンハーゲンを目指して旅する少女。

そして題材童話が「シンデレラ

シンデレラはまず赤ずきんと会います。

ここからシンデレラ童話通りにお城に向かうのですが、赤ずきんも同行します。ですが行きの馬車でまさかの馬車が人を轢き殺してしまい……笑)といきなり倒錯ミステリのような展開になっていきます。

もうこの時点でどうなるんだ?と引き込まれていきます。

二人は殺してしまった人をまさかの隠蔽、笑)そのまま夜会へといくのですが、その後ロジックが徐々に解き明かされていく展開になるほどなぁと。

シンデレラの夜中の十二時を超えたら魔法が解けてしまう要素や、虐げられていた日々を上手く使っていくのは中々巧みですし、やっぱり着想や想像力が見事だなぁと思えました。

何とか事件は解決し、赤ずきんはシュペンハーゲン目指して次の旅に出かけます。

第二章「甘い密室の崩壊」

こちらはあの「ヘンゼルとグレーテル」が童話の主体です。

本来は幸せになれる終わり方なのですが、こちらでもヘンゼルとグレーテルが犯した殺人事件により展開がミステリになっていきます。

こちらも倒錯ミステリに近いですね。

お菓子の家や、継母が子供を森に捨てる童話の悲しき路線が、見事にハウダニットとホワイダニットを作り上げていきます。

それを赤ずきんが解き明かしていく展開も楽しみながら読めました。

赤ずきんは旅を続けます。

第三章「眠れる森の秘密たち」

こちらは「眠れる森の美女」から。

詳細は省きますが、眠ってしまった美女に王子様がキスをしてハッピーエンドというやつですね。

こちらに関しては少し、人物が多く出てきたので、さらにそれが短編なので途中混乱しかけましたが、結構トリックが本格路線でしたね。

ただトリックの小道具が想像しずらかったのが本音で、その犯行が可能なのか不可能なのか少しわからないまま終わってしまった印象があります。

まぁ展開的な着想は、なるほど面白いなぁ関心して読めたと思います。

そして最後に、赤ずきんがシュペンハーゲンに旅する目的が判明。

まさかの「殺したい人がいる」と不気味に言い残して、次に続きます。

最終章「少女よ、野望のマッチを灯せ」

さぁ赤ずきんの目的地であるシュペンハーゲンに舞台は移ります。

こちらの題材はタイトルから察する通り「マッチ売りの少女」です。希望じゃくて野望っていうね……笑

まずこの物語のif度合いにめっちゃくちゃ笑いました。

本来のマッチ売りの少女は、マッチが売れず心痛い悲劇的な終わりを迎えます。

ですが、ですがですね!もしもこの「マッチ売りの少女が何クソ根性で這い上がってきたら……」というのが面白い。爆笑

この成り上がりに成功した13歳のマッチ売りの少女・エレンがマッチ会社を大きくさせ、世界的な富豪になるのです。笑

ですがそのマッチは、幻覚を見せる麻薬的な効果を含んでいると……。笑

更に赤ずきんの過去が同時に判明!赤ずきんのおばあさんは、このマッチにより依存症となり、廃人となって死亡というまさかの展開だった。笑

このおばあさん以外にも世界各地で同様の事件が勃発するも、世界から麻薬が消えないのと同じようにマッチ事業はさらなる飛躍を見せます。

ここでついに赤ずきんの「殺したい人」はマッチ売りの少女となります。

なのでマッチ売りの少女VS赤ずきんという対立が起きます。笑

ここのトリックは今までの短編集キャラ全員集合的な展開でまぁまぁでした。

何よりマッチ売りの少女・エレンの成り上がりifストーリーが強すぎて面白かったですね。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

大事な所はなるべく省いたつもりですが、つい熱が入って書いてしまっていたら申し訳ないです。

全体的に統括すると「童話if+本格ミステリ」という感じですね。

素直に着想力と想像力が素晴らしかったです。

ただ本格路線なのですが、トリックは魔法なども扱いますし、細かい所は受け流し、あくまでも娯楽的に楽しむのがベストかなと。

いまでも振り返って思うのは、最後の短編タイトル「少女よ、野望のマッチを灯せ」が好きすぎましたね。笑

ちょっと変わった小説、ミステリが読みたい方は是非一度手にとってもいいかもです。

多分一度読んだらつい他人にオススメしたくなる小説だと思います。

着想の柔軟性とユーモラスな感覚が結果的に素晴らしい作品を生み出しました。その精神力と挑戦的な心意気、青柳碧人さん、覚えましたよ、とても稀有な作家さんですね。

またいつか別の作品もいつか読んでみようかと思います。

あと何回見てもこの表紙が面白すぎる。笑

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