あらすじ
時は乱世。天下統一を目指す秀吉の軍勢が唯一、落とせない城があった。武州・忍城。周囲を湖で囲まれ、「浮城」と呼ばれていた。城主・成田長親は、領民から「のぼう様」と呼ばれ、泰然としている男。智も仁も勇もないが、しかし、誰も及ばぬ「人気」があった―。
(小学館より)
感想・レビュー
第六回本屋大賞2位ノミネート
元々、第29回城戸賞(脚本家の新人賞)を「忍ぶの城」で受賞した本作を映画化前提で小説家したみたいです。
そんな和田竜さんはもちろん初読みになります。
本作は戦国時代真っ只中の歴史小説。成田長親という人物が一応主役の作品で、私の戦国知識では全然知りませんでした。
そんな私自身、久しぶりの歴史小説?だった気もしますが、それなりに楽しめたかと思います。
ではさっそく振り返っていきますか。
物語は、忍城(北条氏)を奪い取ろうとする天下無双の豊臣秀吉軍にどうやって立ち向かうのか?という忍城側が主役になります。
丹波、靱負、和泉など他にも優秀な家老たちが揃うが、その当主である成田長親は「でくのぼう」を地で行くような人物。
村の百姓たちからも「のぼう様」と直接呼ばれる始末。だがとうの「のぼう様」は一切気にする風もなく、民と接するこの戦国時代では異例な関係。
そんな普段からやる気ゼロに見えるののぼう様の城「忍城」に石田三成軍が圧倒的勢力を持って攻めてくる。
当初はあっけなく「開城」の流れだったが、長親の独断で「戦」となる。ここからが面白い。
兵などは圧倒的な戦力差であり、当時の豊臣秀吉に逆らうなど即刻「死」に値するレベルなのだが、百姓や配下たちは「のぼう様」を守ってやらなければと奮起する。
まぁ細かな詳細はこれ以上省きますが、最終的に忍城は石田三成に開城することになります。
結局どんな感じだった?
序盤は結構読み難く、中々内容が入ってこない感じもありました。
ですが「のぼう様」が登場してきた辺りからは、やっと物語の本筋が動き出し、戦が始まってからは一気に読めましたね。
豊臣サイド(主に石田三成)視点もあってそこも結構面白く読めました。
のぼう様を含め家臣や百姓、甲斐姫といった個性的なキャラクターがこの小説の強みだったかと思います。
歴史小説なのですが、やはりどちらかと言うとエンタメ色の側面が強い感じでしたね。戦の緊迫感というより「恋」とか「人間」に重きを置いた感じ。
なのでこの時代が持つ特有の「命」の呆気なさと重みはなどは、ほぼ感じませんでした。
あと脚本家デビュー作の著者さんに、こんなことを言うのも何なのですが、やはりどう読んでも文章力が甘いというか、無駄な表現が多数、目に付きましたね。
絶対一文で表現出来そうな文章が二文であったりするところなど。
そもそも映画前提の小説化なので、キャラクターさえ立っていれば正味文章なんてどうでもいいのかもしれませんが、一人の小説好きとしては、歴史小説にはもう少し洗練された文章力が欲しいのは正直なところですかね。
とはいえ、ストーリーで引っ張っていける作品になっており、史実も面白い所を引っ張ってきてます。
かつ、キャラクターの個性的な脚色も誰が読んでもわかり易くなっているのは、脚本家としての実力が十分に発揮されていて本作を魅力的なものにもしていました。
個人的には石田三成が何だかんだいって、最後辺りもかっこ良かったなぁ。
もちろん、のぼう様も魅力的だったし、戦場の丹波や和泉、靱負たちもかっこ良かった。
それでは今日はこの辺で終わりたいと思います。最後までお読み頂きありがとうございます。
合わせて読みたい
書店員が決める【歴代本屋大賞】全年度版ランキング!感想あり