キネマトグラフィカ【あらすじネタバレ感想】老舗映画会社に入社した、六人男女の青春群像劇!

あらすじ

あの頃思い描いていた自分に、いまなれているだろうか――老舗映画会社に新卒入社し、“平成元年組”と呼ばれた六人の男女。今はそれぞれの道を歩む彼らが、とある地方映画館で思い出の映画を鑑賞しながら、二十五年前に起きた“フィルムリレー”に思いを馳せる。フィルムはデータに、劇場はシネコンに……四半世紀の間に映画の形態が移り変わったように、映画と共に生きた彼らの人生もまた変化していった。働く人すべての心を熱くする、傑作エンターテイメント。

(東京創元社より)

感想・レビュー

古内一絵さんは初読みになります。

まず本作は読書メーターの献本サービスに抽選で当たりまして、贈って頂きました。ありがとうございます。

さて物語は、90年代初期頃(平成元年)の、社会が女性を取り入れようとする流れの映画業界が舞台となっており、プロローグとエピローグでは2018年となっています。

主役は六人の男女。全員が映画会社の同期。青春群像劇みたいな感じです。

六人は、ある事件というかミスをきっかけに、フィルムを各担当が全国を横断することに。それをリレーするような形で、三人称一視点で描かれていきます。

構成もなるほど、この作品の特徴を使っていて面白いなぁと感じました

でまず読んだ所感としては、失礼ですが想定していたより面白かったかなぁと。

プロローグを読んだ時は、五十代の同期メンバーが同窓会のような集まりで会話していて、昔を振り返る感じが、なんかキツイかなぁと思っていたのですが、各メンバーの二十代のリレーが始まり、徐々に各登場人物の背景だったり思惑が、社会風刺を交えて描かれていて、どんどんのめり込んでいけました。

ただ当時の女性的社会風刺は、もう散々どこかで言われている内容な気もするので、そこだけ読んでいると「またか」と思いストレスが強く残りすぎるような気もしました。

でも最後の小笠原麗羅のところがとても良かったので、エピローグも引き締まったかなぁと思えました。

もちろん男子メンバーもそれなりに面白かったかと思います。ではなぜそれなりに面白かったのかは、時代背景が私的には、少し未知だったので、面白く感じられました。

ただ正直に言いますと、キャラクターがどこかで見たことのあるような、記号的個性の登場人物ばかりだったので、少し物足りないかなぁというのも本音ではあります。

もちろん、昔の映画業界という特殊背景なので、あまりにも突飛なキャラクターだと新規読者が飛ぶ可能性が高いので、難しいところではあると思うですが、贅沢なことをいうならば、もう少しだけ感情的な新鮮さが欲しかったかなぁ。

でも男子メンバーなんかも面白いのは面白いので、それだけは勘違いしないで下さいね。笑

まぁ等身大の人間を描くことにおいて、切り口、視点にはもう限界があるのかしら、うーん。

あとは北野咲子の女性問題になると熱が入りすぎてか、文章が他のメンバーより情緒的になりすぎるような気もするので、臭く感じる人は感じるかと思います。

小笠原麗羅の時にも書きましたが、私はエピローグを読んでから、なるほど、結果的に良い方向に収まったのではないかな、と思えましたね。

なので、想定したより面白かったと思えました。

あとは映画業界の昔と今の違いなども、純粋に興味深く読めたかと思います。熱量もしっかりと伝わってきました。

少し記憶が曖昧なのですが、前に読んだ浅田次郎さんの「オリオン座からの招待状」という短編が閉館する映画館を扱ったもので、こちらも良かった印象があります。

わりと感動した作品だったので、気になった方は、一度読んでみてはどうでしょうか。

あとこれは巻末で知ったのですが、著者の古内さんは、元映画業界で働いていたらしいです。

えーでは、今日はこれで終わります。あ、読書メーター様いつもありがとうございます。お疲れ様でした。

紹介した本

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