バッテリー【あらすじネタバレ感想】児童書とは思えない、大人も読める物語

あらすじ

「そうだ、本気になれよ。本気で向かってこい。―関係ないこと全部捨てて、おれの球だけを見ろよ」中学入学を目前に控えた春休み、岡山県境の地方都市、新田に引っ越してきた原田巧。天才ピッチャーとしての才能に絶大な自信を持ち、それゆえ時に冷酷なまでに他者を切り捨てる巧の前に、同級生の永倉豪が現れ、彼とバッテリーを組むことを熱望する。巧に対し、豪はミットを構え本気の野球を申し出るが―。『これは本当に児童書なのか!?』ジャンルを越え、大人も子どもも夢中にさせたあの話題作が、ついに待望の文庫化。

(KADOKAWAより)

感想・レビュー

第35回野間児童文芸賞受賞作。

あさのあつこさんは、このブログには記録していませんが、中学生のとき「THE MANZAI」にハマって母親に書店で続刊を買ってもらった記憶が残っています。

本作のバッテリーは、確か過去にドラマ?だけ見たことがあって、それでも小学生とかだったので、あまり記憶が残っておらず、改めてこの機会に読んでみました。

まず読んだ所感としては、面白い、面白かったです。

児童書ということなのですが、思春期や子供の感情や、家族の繊細な揺れ動きなんかは、もはや一般文芸レベルで、大人が読んでもというか、大人が普通に読める話で驚きました。

更にいいとこ取りというか、一応児童たちがちゃんと読めるようなリーダビリティなので読みやすく、かつ内容はシンプルでありがなら単調ではない、と大ベストセラー作品になったのにも頷けます。

さて、物語は野球を題材に、今年の春から中学生になる天才ピッチャーの原田巧を主軸に動きます。

原田家は、父親の転勤により、岡山の県境に引っ越し、そこで巧の相棒になるキャッチャーの永倉豪と出会うことによって物語が動いていく。

巧はいつも冷静沈着で、子供にしては大人びでいて、孤高なタイプ。豪はその真逆で、人に優しく、時に熱く、面倒見が良い野球が大好き少年。

物語自体は、まだ巧が中学に入学する前の話で終わってしまいますが、分かりやすく纏めると田舎の弱小チームに茂野吾郎がやってきたみたいな縮図。

巧には、体が弱い2つ下のかわいい癒し系の弟・青波(せいは)がいて、母親はそちらを溺愛。そうなった関係も読んでいてわかりますし、父親は仕事人間で、今まであまり息子たちには関わっておらず…と微妙な家族関係にも見えるが、よくある現象にも思える。

原田一家が引っ越ししたことにより、昔高校野球の監督をしていた祖父と一緒に住むことになります。

その影響で、こうした微妙な家族関係や病弱な青波の成長、そして主人公の巧の機微な感情を上手く描写していて、改めてこれは児童書のレベルではないな、と思いました。

巧の周囲にいる友達というか、同級生たちや、大人たちの動かし方も上手い。

構成も最後に児童書らしい兄弟たちの山を持ってきていて、その後の変化も纏まっていました。

三人称で描かれていますが、大人な巧の、まだ子供としての機微な内面描写には、めくる頁が止まりませんでした。

大人になった今読むと、母親たちの言い分もわかりますし、子供たち側の気持ちである素直に野球やらせてくれよって気持ちもわかります。

これに関しては、どっちが正しいとか間違っているとかではなく、答えはないと思います。

作中で江藤というキャラクターがいて、その子は結局勉強の為に私立の中学に行き、野球を辞めてしまいます。

江藤はおそらく野球が好きだろうし、悔しい気持ちもあったと思います。私はその描写をわざわざ描いた意味は、そういう正しいとか間違っているとかのアンサーだったのかな?と思っています。

どっちを選択したとしても、後悔しない生き方をするしかないし、もっと掘り下げると、これで勉強した江藤が将来すごい役職についたとしても、つかなかったとしても、誰かと優劣を比べる必要なんてどこにもないんですよね。

例え巧がプロ野球選手になったとしても、ですね。

もう一人、作中で稲村のおじさんという、祖父が高校野球の監督をしている時の生徒がいるのですが、今は普通に田舎で働いていて、ある日巧と野球勝負をするのです。

稲村のおじさんは、巧の球をちゃんと打てなかったことにより、また野球少年の血が目覚めて、会社で野球チームを作ろうとすることになる。

たぶん稲村のおじさんは、巧の球が打てなかった悔しさよりも、また野球がしたい、という気持ちが芽生えた嬉しさがあるんじゃないですかね。

そういう今を楽しむ姿勢がとても大事だし、健全なのではないかと、私は読んでいてとても良いなぁと思えました。

私も小学一年から野球していた野球少年ですし、ピッチャーでした。年後の弟も一緒にやっていましたし、その時野球に誘った友達も、最近プロ野球選手になりましたし、なんか昔をぼんやりと思い出すような、良い一冊でした。

余裕があったら是非とも続刊を読みたいのですが、読めるかなぁ。

積読が山のようにあるので、微妙なところですが、やはりTHE MANZAIの時もそうでしたが、私的にあさのあつこさんとの相性もいいのか、バッテリーも全然読みたいレベルですね。

では、今日はこのへんで終わります。おやすみなさいませ。

紹介した本