あらすじ
この告白によって、私は自らを死刑に処す――。
女に魅力を感じず、血に塗れた死を憧憬しつつ自らの性的指向に煩悶する少年「私」。軍靴の響き高まるなか、級友の妹と出会い、愛され、幸福らしきものに酔うが、彼女と唇を重ねたその瞬間「私には凡てがわかった。一刻も早く逃げなければならぬ」――。少年が到達した驚異の境地とは? 自らを断頭台にかけた、典雅にしてスキャンダラスな性的自伝。詳細な注解付。【新装版】
(新潮社より)
感想・レビュー
三島由紀夫は、初読みになります。
男を見て勃起し、射精を繰り返す男の告白。
大正の終わり、幼年時代から昭和の戦後にかけて女に対し、そして己に対しての心情を世に掛けて小説に落とし込んでいく三島の小説。
令和たる多様化の現代であっても、主人公のような思考の組み立て、行動に賛同する者は少ない。だが心の内で大賛同する。
終わり方も個人的には、好きでした。
作品を言語の構築物とする文体は、古典的でもあるけれど、美しさすら感じる。もちろん、好き嫌いはあると思いますが。
私にはまだぼんやりとすごいとしか思えませんでした。
三島由紀夫が残した戦後文学の遺産は大きいと謂われる理由がよく分かる小説であり、彼の後の生涯を暗示するような描写には、ドキッとさせられもします。
これを二十代前半にして書いていた時、どこまで先を見据えていたのであろうか。などと考えてしまう。
その後の三島は、ロマン主義と対極にある古典主義との間で揺れ動きながら作品を書き続け、国粋主義(ナショナリズム)などにも傾倒していきます。
最後は例の市ヶ谷駐屯地ですが、彼の死後には、所謂「第三の新人(遠藤周作、小島信夫、安岡章太郎、阿川弘之、吉行淳之介、庄野潤三)」たちがデビューしてきます。