あらすじ
ある朝、突然自分の名前を喪失してしまった男。以来彼は慣習に塗り固められた現実での存在権を失った。自らの帰属すべき場所を持たぬ彼の眼には、現実が奇怪な不条理の塊とうつる。他人との接触に支障を来たし、マネキン人形やラクダに奇妙な愛情を抱く。そして……。独特の寓意とユーモアで、孤独な人間の実存的体験を描き、その底に価値逆転の方向を探った芥川賞受賞の野心作。
(新潮社より)
感想・レビュー
第25回芥川賞受賞作
第一部「S・カルマ氏の犯罪」ほか二部三部の二篇。
安部公房氏初読みになります。
まず芥川賞である第一部から。
或る朝に名前を盗まれた主人公という。
どこかカフカを連想させる著者の世界観を開幕から解放してきて困惑したものの、なんだかんだで最後まで読ませる力があります。
それは間違いなく筆力がある証拠で、ユーモラスな部分と風刺的な塩梅も程良いと思えました。
ただ意味が分からないことも多かったです。
個人的には三部の「魔法のチョーク」や「事業」がとても面白く、特に事業は吹き出すように笑った。
文章は一番詰まっていたけれどとても自然体な気がして読み心地が良く好印象でした。
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