あらすじ
エンタメ小説界のトップを走り続ける著者が、作家になるために必要な技術と作家としての生き方のすべてを公開。受講生の作品を題材に、一人称の書き方やキャラクターの作り方、描写のコツなど小説の技術を指南。さらにデビューの方法やデビュー後の心得までを伝授する。文庫版特別講義ではウェブ小説やライトノベルを含めた今の小説界を総括。いかにデビューし、生き残っていくかを語り尽くす。エンタメ系小説講座の決定版!
(KADOKAWAより)
感想・レビュー
とてもいい本でした。小説を読む間の箸休めとして読んでいたので読むのに数ヶ月はかかった気がしますが、すごく面白く、興味深くよめたかと。
大沢在昌さんは過去に一度「新宿鮫」を読みましたが、今回は創作指南を。
本書は、文庫化されたバージョンです。なので一流編集者さんと大沢在昌さんの近年の出版業界についての話し合いなんかも特別収録されていてこちらも面白かったですね。
では、本書は創作の基礎的なところから、応用に至るまで、ほか、作家になってからなどのアドバイスがあります。
それを小説家デビューを狙う受講生たちと共にい一年間の受講記録ともいえる内容で、実際にこのような受講があったようです。
私は別に作家になりたいとかはないのですが、興味本位から色々と出版業界や創作指南書を読んできましたが、かなり上位に入る面白さで、とてもわかり易かったかと。
読者として出版業界について考えてみる
ただやはり近年というかもうずっと出版業界はどう考えても厳しい状況ですね。これは小説的にというよりも、全部だと思います。
その中でもスマホ前、後というのは大きく、幾ら電子書籍が発展しようと、やはり大きな決め手はYouTubeの台頭でしょう。
無料にはどうしても敵わないし、かつ提供するyoutuber側は好きなことやってローリスクで儲ける可能性が少なくとも作家よりかはあります。これもかなり大きいかと。
もちろん、youtuber側にも色々と才能などが求められることはあると思いますが、その求められる才能の振り幅が多彩で、それはより多くの人に可能性をもたらし、マニアックな分野で顧客数が少なくとも小説読者よりは遥かに多く、間違いなく時代の娯楽という覇権を握っています。昔の文学全盛期がこれでした。
ですが出版業界は、全盛期とは真逆で、面白い面白くない関係なく何が何でも売れる本は出さなければいけなくなったし、作家は売れる売れない関係なく面白い作品を書きたがるのが原始的な性だと思うのですが、この乖離感が何れビジネスとして成り立たなくなる気もしています。
まぁ仕方ないちゃ仕方ないんでしょうねぇ。
長年「作家を目指す人は増え続け、読む人は減少している」と色々な方の本で散見します。
ですが最近思ったのは、こうやって言われているのがまだ救いともいえるような言えないような気もします。いずれこの作家を目指す人、特に若い子が減り続ければ、かなり厳しい状況になるのではないでしょうか。
もう微かになっている気もしますが、夢のない世界は、どうしても新たな才能の数を減らしますから、必然的に発展しなくなります。
大沢在昌さん自身も23歳で若くしてデビューし、十年近く売れない本を書き続けてきたと言っていましたが、いまの出版業界にそんな体力、余裕は勿論ないです。そんな新人さんは即刻廃業でしょう。
それでも私は、小説を読むのが好きなので、少しでも業界が盛り上がって欲しいし、大きなお世話かもしれませんが、作家さんが一生懸命書いた作品の感想が少しでも届けばいいなと思い、ブログなどをちょこまかと更新してはいますが、これも年々希少種になっているのかもしれません。
読書メーターなどでも、私のような二十代で小説をそれなりに読破しているという方は、いないとはいいませんがやはり少ないです。
いても漫画読みくらいで、小説をばりばり読んでいる方に多いのは、圧倒的に年上の方、ご年配の方の比率が多いです。
もちろん読書メーターだけが全てではありませんが、間違いなく業界が盛り上がっていればこのような感覚はあり得ません。
寂しいですが、人の少ないビジネスはいずれ死にます。一部で、昔の出版業界が散々好き勝手した負の遺産のせいだという人もいますが、多分そこまで関係ないです。
娯楽の増加、クオリティ向上もありますし、スマホが出てきた時代の運命だとも思います。
本書とは少し関係ない話をつらつらと書きましたが、この本はとても良かったです。
多くの人が昔のように小説を読む時代になるには、どうしたら良いんでしょうかね。もう無理なのかしら……。