あらすじ
谷原京子、二十八歳。吉祥寺の書店の契約社員。超多忙なのに薄給。お客様からのクレームは日常茶飯事。
(角川春樹事務所より)
店長は山本猛という名前ばかり勇ましい「非」敏腕。人を苛立たせる天才だ。ああ、店長がバカすぎる!
毎日「マジで辞めてやる! 」と思いながら、しかし仕事を、本を、小説を愛する京子は──。
全国の読者、書店員から、感動、共感、応援を沢山いただいた、二〇二〇年本屋大賞ノミネート作にして大ヒット作。
巻末にボーナストラック&早見和真×角川春樹のオリジナル対談を収録!
感想・レビュー
第十七回本屋大賞第九位ノミネート
早見和真さんは「ザ・ロイヤルファミリー」以来ですね。
その時が馬主の話だったのですが、今回は書店員のお話。
全体的にコメディよりのちょっとミステリ的な今どきな作品でしたね。
読み終えた読後感としては、コメディとして普通に読みやすくて面白かったけど「それ以上でもそれ以下でもない」という感じがでしょうか。
コメディ作品として、ドラマ化や映画化など、今すぐにでもメディアミックス展開出来そうな感じもします。
個人的には少し物足りない気もしますが、息抜きにはぴったりだと思います。
普段小説をあまり読まない方でも、すらすらと読めるかなと。
さて、物語は主人公である三十路手前の独身女書店員(派遣社員)の一人称視点。
書店員としての日々の苦悩や、この年齢ならではの独身女性の焦りなどが、コメディタッチに描かれていきます。
書店業界特有の事情なども相まって、章ごとに様々なお話も楽しめます。
構成のテンポ感もリズミカルで、バカらしくなるような笑える部分もあって良いです。
あとはタイトルにもなっている店長がバカなんですけどミステリアスな一面を持っていたり、登場してくる人物も面白い。
今思い返せばあのクレーマー神様の態度だけむちゃくちゃ腹たったなぁ、笑
あと自作を作品内で間接的に褒めまくる仕掛けには、少し読んでるこっちがむず痒くなるような感じもしました。
まぁ別にいいんですけどね。笑
最後の後日談も短いですが、まだ続きそうな感じがして面白かったです。
それよりも早見さんってとても器用な作家さんなんだなと思いました。
現代の小説家は、こういう柔らかい作品を書ける人は強いですし、食っていくことを意識するなら重たい作品だけでは中々難しいですからね。
個人的には「ザ・ロイヤルファミリー」の方が、情熱が肌で伝わってきて好きですが。
けれどその作品もマニアックな題材ですし、寂しいですが熱量と売上って比例しないのが今の出版業界なのでね、それと似たようなことが作品内で描かれてもいましたしね。
巻末には、角川春樹氏と早見和真さんの対談が載っていまして、角川春樹さんは偉い人なんでしょうけど、発言から滲み出る横柄さというか品の無さというか、頭の硬さには少し鼻につきましたね。
まさに作品内で書かれている偉そうな出版屋の人って感じがして。笑
思ったことを正直に書きすぎて申し訳ないのですが、小説自体は良いです。ですが個人的にはこの対談はあまり好きではないですね。
では今日はこの辺でおわります。
最後までお読み頂きありがとう御座いました。
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