想像ラジオ【あらすじネタバレ感想】想像力の中でしか聞こえないラジオは誰に届く?

あらすじ

深夜二時四十六分。海沿いの小さな町を見下ろす杉の木のてっぺんから、「想像」という電波を使って「あなたの想像力の中」だけで聴こえるという、ラジオ番組のオンエアを始めたDJアーク。その理由は―東日本大震災を背景に、生者と死者の新たな関係を描き出しベストセラーとなった著者代表作。

(河出書房新社より)

感想・レビュー

第35回野間文芸新人賞。第十一回本屋大賞第8位ノミネート。

いとうせいこうさんは初めて読みます。

いとうせいこうさんといえば僕たちの世代は、十代後半辺りに始まった「フリースタイルダンジョン」の何故かいつもいる審査員、というイメージなのですが、どうやら過去に小説やエッセイなど幾つか出版しているマルチな方らしいです。

ということでだいぶ前からいつか読もうと本作をチェックしておりました。

野間文芸新人賞も受賞しているという本作。まず読んでみた所感としては、なんだかんだで読んでしまう不思議な魅力を感じる作品だったなぁという感じでしょうか。

さっそく感想を書いていきます。

主に「ラジオ」と「東日本大震災」を絡めた話ではあるんですが、事はそう単純な感じではなく。

まず全五章の構成で、【DJアーク】というユニークなラジオパーソナリティの章と、【作家S】の話の章が交互にありまして、うーん、要約が難しいなぁ。笑

えーと、DJアークはそもそも死んでおりまして(唐突w)、「想像ラジオ」という聞こえる人には聞こえるラジオのパーソナリティを務めているんです。

その目的も徐々にわかってくるんですけど、生きているはずの奥さんと息子が自分のラジオを聞いてくれるのをずっと待っているんですよ。

そもそも「想像ラジオ」っていうのは生者と死者の狭間みたいな世界で放送されているらしく、死んだ人だけではなく、生きている人も聞こえる人はいる。

リスナーも東日本大震災で亡くなったような人も多くて。

じゃあ生きているのに「想像ラジオ」が聞こえない人ってどんな人だろう、わからないから小説を脳内空想で書いてみようって。

で次に作家Sは、その「想像ラジオ」が聞こえない人です。話は東日本大震災に移るんですけど、作家Sは現地にボランティアしに行った際に、そこで被害を受けてはいない人は、勝手に哀れんだり、悲しんではいけないのか、みたない議論になるんです。

確かに自分や身内にも被害を受けてもいないのに、簡単に同情したりすると、実際に被害を受けた人からすると、何を勝手なことを言ってんだ、黙ってろと思う人もいるかもしれない。

それくらい、東日本大震災だけじゃないけど、過去の災害だったり、戦争は人の心も傷つけた。

ここが結構興味深くて、一種の警鐘を鳴らしているんだと思っていまして、でもそれじゃあ「過去」という暴力に事象がさらされた時、人は物事を「忘れ」、無かったことにしてしまう。

当然ですよね、人間には寿命があり、「生者」と「死者」がいて、それを繰り返すのだから。

だから被害を受けてない人も、同じように悲しんだり、哀れんだりしていいんだと、そうやって、過去に生きてきた知らない人たちの思いも語っていかなくていけないのではないか、と。

確かにな、と思いました。今まさに日本の人口は、第二次世界大戦を知らない世代が多くを占めはじめていますが、それでも語り継がなくてはいけない。

けど、被害者ではない我々が、黙ってしまうと、それは長い時間をかけて無かった事になってしまう。

他にも死人を思いすぎたり、過去に囚われ続けるのは良くない、みたいな風潮ってあるじゃないですか、それってどうなんだ、みたいな話にもなるんですけど、別にいつまでも思っていて、いんじゃない?っていうことがメッセージとして私は受け取りました。

確かに、過去に囚われ過ぎて、前(現実)に進めない人も出てくるし、一概にこうだ、とも言えないのも事実だとは思うんですけど、忘れ去られることが、何よりも悲しいのかもしれません。

まぁ私は結構冷めてる人間なんで、例えば平安でも戦国時代でも何でも良いんでけど、教科書に載っているような有名な人以外はもう誰も覚えてねぇし、生きてねぇよってなりますし、思考をより俯瞰的にするだけで、それが人類の歴史の繰り返しだと思ってしまうことも出来ます。

まぁあんまり褒められた考え方ではないんでしょうけど。

せめて一緒に生きた時代の人たちの同志だけでも、覚えておこうと、する気持ちもわからなくはないです。

ここで話を戻しまして、そういったメッセージ性をギルガメシュ叙事詩などのパーツに当てはめたり、ラジオとしてあるあるを交えて、物語を進行させたりするも実験的で、いかにも文学だなぁと思い、楽しいっていうのが正しい表現かわかりませんが、興味深く読ませて頂きました。

今感想を書きながら、思い返しても、確かに生者と死者、被害者とそうじゃない人の壁って、なんか難しいなぁと、悶々としております。

同時にそれをこういったやり方で表現するいとうさんの力量というか閃きにも関心しています。

うーん、変に煮詰まりそうなので、今日はここまで。笑

お疲れ様でした。想ー像ーラジオー。

紹介した本