あらすじ
旅をすることがおれの人生にあたえられた役目なんだ。
北から南へ、そして南から北へ。突然高度な文明を失った代償として、人びとが超能力を獲得しだした「この世界」で、ひたすら旅を続ける男ラゴス。
集団転移、壁抜けなどの体験を繰り返し、二度も奴隷の身に落とされながら、生涯をかけて旅をするラゴスの目的は何か?
異空間と異時間がクロスする不思議な物語世界に人間の一生と文明の消長をかっちりと構築した爽快な連作長編。
(新潮社より)
感想・レビュー
筒井康隆さんは初読みになります。
いやぁ面白かったなぁというのが正直な読後感。スラスラと読んでしまいましたね。
12の短編からなる連作長編小説。ジャンルは一応SF、とファンタジーになるのかしら。
序盤は不思議系な短編集かと思いましたが、徐々に頁を捲り続け気づけば主人公のラゴスの旅(物語)を読み終えて満足するお話でした。
設定として現代文明を失った未来的な認識でいいのか。その代わりといってはなんですが、集団転移、壁抜け、読心術、宙に浮く他諸々の異能力が微かに芽生える者がいたりする。
そんな世界でラゴスは各地を旅し、時には村を助け、時には奴隷にされ、時には王国の王様になったりと天と地の旅を続けるといった感じ。
道中で出会うラゴスに恋する女たちが多いこと、ラノベ主人公ばりにラゴスは女にモテる。笑
当時はまだラノベっていう概念はギリギリなかったかな?
まぁそれは置いといて、なんと引き込まれる世界観と人物たちであろう。動物や植物のオリジナルと現物がいい塩梅にミックスされた世界がとにかく魅力的です。
なんかこうして感想を書きながら思ったのは、たまにある面白いけど感想が難しいタイプの作品なんです。
物語がしっかりあって、SFもあって、でもラゴスの人生譚でもある。これは私の隠れ嬉しいポイントで一冊で主人公の人生を最後まで描いてくれる作品って結構好きなんですよね。
最後も一番はじめの恋を追いかけて70歳を超えたラゴスが死の旅に行く姿なんかすごくかっこいいし、また最後にこの主人公が好きになる。
王国の話、銀鉱の話、たまご道、赤い蝶の話、壁抜け芸人、集団転移、奴隷商人など振り返れば魅力的な話ばかりでした。
また忘れた頃に読み直したい作品の一つになりましたね。
どんな人におすすめ?
まだ筒井康隆さんを読んだことがない方や、SFやファンタジー好きにもかなりオススメできる作品かと思います。
では今日はこの辺でおわります。お疲れ様でした。