あらすじ
幼い頃から本が大好きな、ある女子大生が事故に巻き込まれ、見知らぬ世界で生まれ変わった。貧しい兵士の家に、病気がちな5歳の女の子、マインとして……。おまけに、その世界では人々の識字率も低く、書物はほとんど存在しない。いくら読みたくても高価で手に入らない。マインは決意する。ないなら、作ってしまえばいいじゃない!目指すは図書館司書。本に囲まれて生きるため、本を作ることから始めよう!
(TOブックスより)
感想・レビュー
安らかに眠れ…あれからおそらく4年以上は眠らせた(積読)であろう本作。笑
気になるジャンルですが、シリーズが長いせいか中々触手が伸びず…
もはやこれは積読と言っていいのか分からないレベルですが、気づけば「このラノ」の新部門設立後から7年連続ノミネートし、そして2023年で三連覇達成!
殿堂入りまで果たし、このタイミングで読まないと逆にいつ読むんだ、と自分でも怖くなってきたので、さっそく読みました。
さていつもの読後の所感としては、結果的に楽しめたけど、手放しでは褒められないなぁというのが正直な所でしょうか。
私が「結果的」にと使う時は、だいたい終盤までの道のりまでに「何か」あるのですけど、本作はまず「平坦すぎる所」と「明らかな違和感」ですかね。
さて物語は現実世界で三度の飯より本が好きな女子大生が、内定を貰っていた就職前に地震で本棚が倒れてきて本に埋もれて死ぬ…笑)
そして転生先で3歳?くらいの幼女になります。でもこの世界には全然本がない。
「それより生活全然違うんですけどぉ…しかも私病弱、でも本が欲しい、よぉし、なら自分で作ろう!」という感じ。適当ですいません。笑
まず先に良いところを書いていきます。
世界観でリアルを求める要素(生活や本造りなど)はすごく良いなと思えましたし、よく勉強されているなと思えました。
この辺りは、正直手を抜こうと思ったら魔法で一発ですけど、路線的にもこういう方向性なんだなと、読みながら掴める要素の一つで、感心しました。
あとは主人公のマインや家族の描写が皆何だかんだで楽しそうな所。
マインは時々、性格の悪さというか若さというか、が内面描写で垣間見えますが、元々22歳前後の女子大生だと思えば、まぁそんな事もあるよな、と個人的には許容範囲内でした。
物語もゆっくりでとても平坦なコースが続きますが、最後のエピローグで、読者がおそらく終始モヤモヤとしていた部分が少し解消されたので「結果的」に楽しめた感じですかね。
では気になった所を。
まずなろう産なのに逆にここまで物語の起伏が少ないんだ、と以外にも思えました。
確かにジャンルは異世界転生ですけど、題材が「本好きが異世界で司書になる」というのもので、挑戦的で良いなと思いましたが、もう少し何か初刊で強い引きが欲しかったというのが正直な所ですね。
転生先がかなり幼い女の子でかつ病弱設定なこともあり、物語が終始大人しくなってしまった印象です。
あとは女性作家?さんが書いたティーンズの女性向け?な路線というのもあるのかもしれませんね。
まぁここまでは別にいいんですけど、やっぱり一番の違和感は、どう考えてもマインが賢すぎるという違和感を、家族が普通に都合よく受け入れてしまっていた…という事ですよね。
明らかに3歳〜6歳?ぐらいの少女とは思えない知恵を家族に披露しており、変わっている子、という範疇は越えてしまっていると思います。笑
料理しかり、文字関連、生活関連など色々と知恵を披露する機会がありましたが、これを姉や母はもう少し勘ぐったり、疑問視し、追い込んでいく描写がないと流石に違和感を覚えるなと。
「結果的」にエピローグで、それを別の人物たちが疑う描写が出てきたので、まぁギリギリセーフかなと個人的には思えましたが、やはりその違和感を一番近くにいる家族が何も言及しない、というのはどう考えてもおかしいです。笑
人は知恵を過去(書物や他人)から学ぶことでしか、自分を拡大させることが出来ないのに対し、今まで病弱でただ寝ていた幼女が急に賢くなることは必ずというか、科学的にあり得ません。笑
文字もその一つですよね。
まだ家に書物や何か学べるモノがあり、外に出て他人に生活関連を学べる訳でもない。
さらに物語設定での庶民は、識字率も悪いですし、本は貴族しか手に入らないということなので、物語でのリアルを求める路線なら余計に怪しむべきですよね。
もしくは終盤でも出ていたこの世界観ならではの「気味悪がって捨てる、いじめる」的な宗教思想を使った方がまだ自然だったのではないのか、と余計に思えました。
という感じですかね。
そもそも現実世界より文明レベルの低い世界へ行って現実世界の知恵を披露…スゴイ!というのが個人的にはすごく冷静に読んでしまうので「いや当たり前やん。笑」と思ってしまうのですが、本作はそれでもまだ楽しめたかなと思っています。
全体的に要約すると「ツメが甘い」これに尽きるのではないでしょうか。
今思えば異世界で司書があるのかまだ今巻ではわかっていませんが、仮にあったとして、そして司書になったとして、それで物語が最終的にどういう結末になるのか逆に気になりますね。
あとラノベなので、イラストについても。読み終えてから表紙を見ると「なるほど」というまた新たな発見があったり、挿絵も結構初刊にしてはクオリティが高かったように思いました。
街の図なんかも物語のファンタジー世界観がよりわかりやすくなるようなものになっていました。
それでは今日はここまで。
ありがとうございました。
余談:作中に出てきたパピルスや書物の歴史を学びたい人は、また最後に別の本を載せておきますので、気になった方はそっちを読んでみるのもいいかもしれません。
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