あらすじ
あなたと共にいることを、世界中の誰もが反対し、批判するはずだ。わたしを心配するからこそ、誰もがわたしの話に耳を傾けないだろう。それでも文、わたしはあなたのそばにいたい―。再会すべきではなかったかもしれない男女がもう一度出会ったとき、運命は周囲の人を巻き込みながら疾走を始める。新しい人間関係への旅立ちを描き、実力派作家が遺憾なく本領を発揮した、息をのむ傑作小説。
(東京創元社より)
感想・レビュー
第十七回本屋大賞“大賞”受賞作品
凪良ゆうさん初読みになります。
BL作家が一般文芸に殴り込みと。近年直木の候補といいよく聞くBL作家。
安易な恋愛モノなら勘弁してくださいと思いつつ、さてお手並み拝見と行きますかと謎の生意気さで読み始める。笑
十七回本屋大賞はこれまでに幾つか読んでいて、どれもかなりの力作だったのでこれを超えてくる大賞とは如何ほどかと半信半疑の気持ちもあったのですが、なるほど、確かに力作でした。
一言で纏めると本作は力強い長編でしたね。
随所に腹立たしい描写があって嫌なストレスが溜まる感じも正直あるのですが、力がある作品なので中々読ませるので一気読みでした。
恋人でもないけど家族でもない、けど一緒にいたいと思える関係性とは?
この作品の核はここにあって、これを作り出す過程が絶妙に上手い。
作中では近年のネット的風刺もあって没入感を加速させてます。
まぁ人間の文明社会が続く限りどれだけ誰かが声を上げようと差別や決めつけは絶対になくならないし、一つなくなっても二つ増えるのが人間が繰り返してきた歴史とも言えるので何年経ってもそこは変わらないと思いますが。
あとは少し気になったところ。何度も更紗含め、周囲のキャラの行動や理解力の乏しさに流石に物語的ご都合に沿いすぎないかと思うシーンも時々感じました。
けど力作にはそれを超えてくる力があるので、大体付き物かと。
終章もなるほど、と思わせられて、ここがまた良かったですね。
更紗と文の未来は困難がまた付き纏うのでしょうけど、梨花も含めて報われて欲しいと思える良いラストだったと個人的には思えました。
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