
あらすじ
明治44年、「雁」を「スバル」誌上で連載開始。鴎外の「豊熟の時代」が燃え盛る――。
貧窮のうちに無邪気に育ったお玉は、結婚に失敗して自殺をはかるが果さず、高利貸しの末造に望まれてその妾になる。女中と二人暮しのお玉は大学生の岡田を知り、しだいに思慕の情をつのらせるが、偶然の重なりから二人は結ばれずに終る……。極めて市井的な一女性の自我の目ざめとその挫折を岡田の友人である「僕」の回想形式をとり、一種のくすんだ哀愁味の中に描く名作である。
(新潮社より)
感想・レビュー
森鷗外は二冊目。
お玉と岡田の決して結ばれないし始まらない恋を「僕」を通して語られていく。
物語の構成や散りばめられた要素に細かい意味があり、拾うのも、純粋に読み物としても面白かったです。
末造やお玉のその後がどうなったのか気になりますが、無用な憶測はしないでおきます。
作中の大正14年というのは、鷗外先生の人生の分岐路であり、書かれた年は35年以上経過していて、その文学背景はとても興味深い時代でありました。
古い話である、という終わった言葉が書き出しの一文に使われて、無用の憶測はの終わりの一文に繋がる。
どこか甘酸っぱさを感じるような。
鷗外作品はぜひとも他の作品も読んでみたいですね。