同志少女よ、敵を撃て【あらすじネタバレ感想】村と母を焼かれた少女は、復讐の為に立ち上がる

あらすじ

独ソ戦が激化する1942年、モスクワ近郊の農村に暮らす少女セラフィマの日常は、突如として奪われた。

急襲したドイツ軍によって、母親のエカチェリーナほか村人たちが惨殺されたのだ。自らも射殺される寸前、セラフィマは赤軍の女性兵士イリーナに救われる。

「戦いたいか、死にたいか」――そう問われた彼女は、イリーナが教官を務める訓練学校で一流の狙撃兵になることを決意する。

母を撃ったドイツ人狙撃手と、母の遺体を焼き払ったイリーナに復讐するために。

同じ境遇で家族を喪い、戦うことを選んだ女性狙撃兵たちとともに訓練を重ねたセラフィマは、やがて独ソ戦の決定的な転換点となるスターリングラードの前線へと向かう。

おびただしい死の果てに、彼女が目にした“真の敵”とは?

(早川書房より)

感想・レビュー

第11回アガサ・クリスティー賞受賞作、第十九回(2022)本屋大賞第一位、このミステリーがすごい!《2023年》第七位

2022年2月に、ロシアとウクライナによる戦争がはじまり、より本作が注目されたような気がしますが、出版時(2021年11月17日)はまだ戦争は起きていませんでした。

まずはじめに「これがデビュー作か、すごいな」と素直に思いましたね。

序盤はライトノベルのようなキャラ付け、展開の見せ方で、重くなる空気感を払拭し、後に戦争という圧力を「人」で描く。

細部の描写も丁寧に感じました。

時代背景は、第二次世界大戦中の独ソ戦のソ連側の視点で描かれていました。

独ソ戦といえば、史上最大の陸上戦と言われるスターリングラードの攻防戦ですね。

その戦いを『ソ連軍・女性兵士』視点で描かれているのが本作の特徴かなと思います。

実在していた『リュドミラ・ミハイロヴナ・パヴリチェンコ(Wikipediaより)』も登場していました。

さて物語は、村娘である「主人公・セラフィマ』は、母に狙撃を習い、狩猟をしながら、それなりに平和に暮らしていました。

セラフィマは学業も優秀で、ドイツ語も学び、将来は「ソ連との架け橋になるような」希望の夢を抱いていました。

ですがある日、村と母親をドイツ兵に殺されます。間一髪の所でセラフィマは、ロシア兵に命を助けられます。

その赤軍・ロシア兵を率いていたのが、『女兵士・イリーナ』でした。イリーナは美貌と非情さを兼ね備えた女性兵士。

そんなイリーナは呆然としているセラフィマにこう問いかけます。

「戦いたいか、死にたいか」この問いが、セラフィマの後の人生を大きく変えていきます。

やがてセラフィマは「戦う」ことを選びますが、イリーナはまずセラフィマの家、死亡した母親、村全体を無情にも焼き払います。

セラフィマの希望の【夢】は、この経験により【復讐】へと変貌し、その対象にドイツ兵と上司になるイリーナも含まれます。

この歪な関係性を保ったまま、セラフィマはイリーナに連れられ、女性兵士になる為、同年代くらいの少女たちと訓練を受け、女性兵士になります。

ここから大きく要約しますが、その後、セラフィマは戦争に駆り出され、多くの仲間を失い、多くの人を撃ち殺し、イリーナという人間を知り、大きな悲しみと苦しみを経験しました。

そしてセラフィマは生き延びたまま、戦争が終わります。

終戦直後、ドイツ市民の女性に暴行し、野蛮な振る舞いしているミハイルを撃ち殺すシーンがありますが、まさに圧巻の一言で、この状況の描き方がとても上手いなと思いました。

ミハイルはソ連軍の暴力的支配体制の中でも珍しく、仲間や部下に暴力統制をしなかったとても賢い優しき人物。そしてセラフィマにとっては、唯一の同郷の幼馴染。

まさにこのシーンは、タイトルにある同志少女よ、敵を撃てになると解釈しています。

セラフィマにとって【敵】というのは、まさにあの優しかったミハイルを変えてしまった【戦争】なんだと思うんですよね。

セラフィマはその【戦争】を撃ち殺した

強いていうなら、このミハイルの部分を冒頭でもう少し掘り下げておけば、なお良かったかなとは思いました。

最後に復讐の対象だったイリーナを殺そうとセラフィマは目論みますが、彼女の真意、抱えていた大きな意志を理解し、共に町外れの家で余生を送りました。

二人のキスシーンなんかもあり、百合の一面もあったりするのですが、ただその背景には苛烈な戦争からなるシスターフッド(同志女性の連帯、絆)があり、また違った心の重み、拠り所みたいなものを感じました。

最後にセラフィマとイリーナの元に「戦争は女の顔をしていない」の依頼が来るシーンなどもありました。

大きく分けて「村編」「訓練生編」「戦争編」「戦後編」と区切りがつけられる構成で、セラフィマという人物を描かれていましたが、その辺も分かりやすかったです。

あとは狙撃兵としての心得やアクション描写、兵による性暴力の概念についても大変興味深い内容でした。

単行本の装丁とイラストがめっちゃくちゃ良かったです。

表紙はセラフィマ、裏面はイリーナ?だと思うのですが、表と裏が繋がっていおり、まるで一枚の絵画のような雰囲気でした。

それでは今日はこの辺で終わりたいと思います。

お読み頂き、ありがとうございました。

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