死者の奢り・飼育【あらすじネタバレ感想】23歳で芥川賞を受賞した大江健三郎の代表作

あらすじ

死体処理室の水槽に浮沈する死骸群に託した屈折ある抒情「死者の奢り」、療養所の厚い壁に閉じこめられた脊椎カリエスの少年たちの哀歌「他人の足」、黒人兵と寒村の子供たちとの無残な悲劇「飼育」、傍観者への嫌悪と侮蔑をこめた「人間の羊」など6編を収める。“閉ざされた壁のなかに生きている状態”を論理的な骨格と動的なうねりをもつ文体で描いた、芥川賞受賞当時の輝ける作品集。

(新潮文庫より)

感想・レビュー

第39回芥川賞受賞作

表題作「飼育」と他五編が収録されていました。

受賞当時大江さんは23歳。後に日本人では「川端康成」以来、二人目のノーベル文学賞受賞者となります。

どれもが戦後近くの作品でそれとなく敗北感が漂ってきます。お世辞抜きに現代の自分が読んでも、全作とても面白く、興味深く読めました。

これが大江健三郎世代の若き日の文学か。もうあの頃には、子供には戻れないと。

「死者の奢り」からこの文庫は始まるのだか、屍体処理室が結構強烈で、女と最後に虚しさが残ります。

「飼育」は1958年に発表された作品です。黒人を飼う村の話で、明らかに最後は辛い流れになるだろうなと予測したしまう程に、物語は良い方向に進むのが多少気になりましたが、最後の終わり方が秀逸です。

村の反応や犬と少女のくだりがとてもよかった。

「他人の足」も脊髄カリエス患者たちの何とも言えない心の情緒、その移り変わりを描いています。この作品も素晴らしい。

「人間の羊」→「不意の啞」→「戦いの今日」の流れで読むと完璧な敗北的虚無感を味わえます。

「不意の唖」なんかも素晴らしいと感じました。少し地味な作品かもしれないですけど、大江健三郎が世界的に評価されるのが、個人的に一番理解出来た作品かもしれません。

あれはまさに書けそうで書けないものを書いているといった感じでしょうか。

あと当時の芥川賞選考委員が、名だたる面子過ぎてちょっと引きました。笑

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