(上巻)あらすじ
物欲の権化のような父フョードル・カラマーゾフの血を、それぞれ相異なりながらも色濃く引いた三人の兄弟。
放蕩無頼な情熱漢ドミートリイ、冷徹な知性人イワン、敬虔な修道者で物語の主人公であるアリョーシャ。そして、フョードルの私生児と噂されるスメルジャコフ。
これらの人物の交錯が作り出す愛憎の地獄図絵の中に、神と人間という根本問題を据え置いた世界文学屈指の名作。
(新潮社より)
(上巻)感想・レビュー
「罪と罰」以来の長い戦いが始まった。
多くの作家がこの作品に強い影響を受けたとか。
上巻は主にカラマーゾフの歴史を辿り、各々の信念が分かった所で早くもぶつかり合います。
三男のアリョーシャだけは、まだ外の世界を知らず、不安定さがあってそれぞれが持つ信念の渦に飲み込まれようとしていて、今後信仰がどう変わっていくのか見ものであります。
正直内容が豊富すぎて感想の書き方が難しいので、さっさと次にいきたいと思います。
ただドスト氏のここまで読ませる力は何なのか、未だに解明できずにいる。
(中巻)あらすじ
19世紀中期、価値観の変動が激しく、無神論が横行する混乱期のロシア社会の中で、アリョーシャの精神的支柱となっていたゾシマ長老が死去する。
その直後、遺産相続と、共通の愛人グルーシェニカをめぐる父フョードルと長兄ドミートリイとの醜悪な争いのうちに、謎のフョードル殺害事件が発生し、ドミートリイは、父親殺しの嫌疑で尋問され、容疑者として連行される。
(新潮社より)
(中巻)感想・レビュー
物語も中盤です。
ゾシマ長老が亡くなり、三男のアリョーシャは迷いや葛藤の末に、清く大地に生きる信条を見つけ出します。
かと思えば一方、長男のドミートリィは父親を殺して金を奪い、捕まってからの尋問にも恥ずかしい程の抵抗と失態を繰り返しついに連行されて物語が終わりました。
なお次男のイワンも新しい旅に出た後だ。
日本の純文学ならもうこれで終わってそうな感じ。
でもこの壮大な物語はまだ下巻が待っている。
早く結末が知りたい。
やはり本作の評価は、下巻がかなり重要な予感がしています。
(下巻)あらすじ
父親殺しの嫌疑をかけられたドミートリイの裁判がはじまる。
公判の進展をつうじて、ロシア社会の現実が明らかにされてゆくとともに、イワンの暗躍と、私生児スメルジャコフの登場によって、事件は意外な方向に発展し、緊迫のうちに結末を迎える。
ドストエフスキーの没する直前まで書き続けられた本書は、有名な「大審問官」の章をはじめ、著者の世界観を集大成した巨編である。
(新潮社より)
(下巻)感想・レビュー
正直に言うと、いまいち消化不良な気がしました。
特にイワンとドミートリィの広げた風呂敷がまだ何も畳まれてない気がして。
確かに当時のロシア的な確信は描かれているので面白いですし、とても判断が難しいのですが何でしょう。裁判のモヤっとした結末か。
一応実際のモデルがあるらしく、でもそれなら別にここまで話を大きくする必要はなかったような気もします。長編なので勝手にカタルシスを求めてしまった部分もあったのか。
ドスト氏は本当にこの終わり方で納得していたのでしょうか。
「罪と罰」のラストが今でも覚えている程の素晴らしい哀愁だったのでそのせいでしょうか。
そして以前この感想を書いていたら、わざわざ親切な方がコメントまでして教えて頂いたのですが、本来「カラマーゾフの兄弟」には続きがあったらしく、ドストエフスキーはその途中で亡くなってしまったらしいとのこと。
なるほど。永遠の未完と。原因解明です。
これを聞けて大変納得しました。その方にはとても感謝しています。
もしドストエフスキーが生きていて全部書いていたら、と思うとどうなったのでしょうか。