あらすじ
藤木芳彦は、ある日、全く見覚えのない場所で目を覚ました。うっすらと霞む視界に映ったのは、雨に濡れ、一面鮮やかな深紅色に染まった異様な世界。奇岩に囲まれた峽谷だ。記憶喪失か、それとも……。
(KADOKAWAより)
感想・レビュー
SFホラー、もしくはサバイバルデスゲームものとでもいうのですかね。
貴志祐介さんは初読みになります。他にも読みたい作品が幾つかあったのですが、まずは本作からとなりました。
さて物語は「火星」という名のオーストリアに送り込まれた日本人たちが、生存を掛けて生き延びようとする。このサバイバルゲーム感がすごく面白かったです。
道中のサバイバル知識が物語世界のに没入感を高めてくれ、人がグールになってしまって人を喰ってしまう展開もヒリヒリとさせてくれます。
途中で恋愛要素を挟みつつ、最後までエンタメとして楽しめました。
ただ最後の外枠(外の世界)に関しては、軽く提示はしているが結局謎のまま終わってしまうのがうーん。
少々ずるいようにも感じたような、まぁそれを書きだすと一冊には収まらないかつ本編とは違ったこともやらなくてはいけないのかなぁとか思ってみたり。
ここが秀逸に練られているかいないかは不明だがやれるなら見たかったかなぁと個人的に思いますが、確かにエンタメ一冊としては非常に読みやすいとも思ったので、やっぱりうーん、難しい。笑
結局のところ何が引っ掛かるかというと、ある程度現実世界をベースにしているので外枠を埋めないと整合性を気にせずやりたい放題のご都合が目立つのですよ。
本作でいうと指示してきた理由が、全て物語を円滑に進める為だけのものだったのではないかという理由だけが残ってしまうんです。
説明を不足させることによって逆に作品の芸術性を高めたり、空想の余地を残すことはいいのですが、それが納得できる場合とそうでない場合があるので、難しいところです。
ただ面白いことは間違いないので、勢いが良い作品です。詰めが甘いですけど。
では今日はこの辺で終わります。失礼しました。