あらすじ
ノースカロライナ州の湿地で青年の遺体が見つかる。
村の人びとは「湿地の少女」カイアに疑いの目を向ける。
幼いころ家族に見捨てられてから、人々にさげすまれながらたった一人湿地で生き抜いてきたカイアは果たして犯人なのか──
(早川書房より)
感想・レビュー
このミステリーがすごい!2021【海外編】第二位ノミネート
読みました。まず感想を書く前に、、本当に素晴らしい小説でした。
前々から近年のアメリカの大ベストセラーということと「野生児」というワードは耳にしていたので、気になってはいました。
前半の生生しいまでの自然描写と、カイアの貧困と孤独の状況は胸が刺されるような思いで、読むのが苦しくもあった。
だが青年テイトに読み書きを教えてもらい、黒人のジャンピンとメイベル夫妻の無償の愛に何度も心が救われる。
しかし湿地の少女には孤独が何度も何度も襲いかかる。
作品はもう一つ別の未来視点が度々進行し、それが中盤以降でカイアの成長と繋がり、サスペンスのようなミステリ的展開へと繋がっていきます。
如何にもアメリカ的なラストであっても、きっと涙を流すことは間違いないです。私は余裕で泣けたし、笑)最後は驚きよりも流石だなぁ、と一人でに納得してしまいました。
作中にも出てくる自然には善悪がなく、だが人間にはどうだろう、、そして大地に生きるカイアには、、と色々と考えさせられるから面白い。
そして純粋にこの作品を書ききった著者がかっこいいな、とも思った。
読み終えたあとは、この本が好きになるし、カイアが読み手の心の中で生きていたような感覚に陥る。
余談ですが、まるでゲームの「アサシンクリード2」の三部作をプレイした後のようだった。
話戻しまして、そしてこの作品が凄いところは、ジャンル分けが明確に出来ないことにもある。
かなりオリジナリティが高いとも言える気がします。
湿地の少女ことカイアの人生譚とも言えるし、サスペンスミステリとも言えるし、作中度々出てくる詩的さや自然さから文学的とも言える。
あと差別的な面からとると社会派小説とも言えなくもない。
何よりカイアを通して人が生きる愛とか醜さや、素晴らしい自然と動物という生命体が描かれていて作品の規模というか器が、計り知れないエネルギーに満ちているように感じました。
気になって調べると著者は70歳前後とのことで、これが一応フィクション小説のデビュー作であると。
著者は動物学者らしく、確かにその専門的知識に裏打ちされた描写力を感じるが、何よりカイアの生涯を描き出すには著者の生きてきた人生感が必要だったのかもしれない。
著者は小さな頃から小説家になることも夢だったとか。
本当に素晴らしい小説を書いてくれたことと、それを翻訳して下さった友廣純氏には感謝の念で一杯です。
そして本作は自信を持って人にオススメできる小説です!
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